インドのニューデリーにある公衆衛生運動研究センターの科学者を含む国際研究チームは、臨床症状が現れる前に妊娠中の子癇(しかん)前症のリスクを予測することができる簡便な血液検査を考案した。母体の血液中の特定のRNA分子を分析することで、子癇前症のリスクを推定する検査が可能となる。科学誌 nature india が1月11日に伝え、研究成果は学術誌 Nature に掲載された。
子癇前症は、妊娠12回に1回の割合で発症し、生涯を通じて心血管疾患や死亡のリスクが高くなるとされている。妊婦に高血圧を引き起こし、死に至ることもある。
研究チームは、年齢、民族、体格の異なる1,800人以上の女性の妊娠中のさまざまな段階における無細胞(cf)RNA分子を分析した。対象となったのは妊娠16週から27週までの女性で、血液サンプルを採取した。そのうち、子癇前症を発症した女性72人の血漿(けっしょう)中のcfRNAシグネチャーと、そうでない女性452人の血漿中のcfRNAシグネチャーを比較した。
その結果、この病気と正常な妊娠を一貫して区別する発現レベルを持つ7つの遺伝子が同定された。このうち4つの遺伝子は、これまでにも子癇前症や胎盤の発達と関連していた。さらにcfRNAシグネチャーを解析し、子癇前症の確率を推定する数理モデルを作成した。このモデルの感度は75%であり、最終的に子癇前症の4分の3を特定することができた。
この新しい検査では、妊婦の血流に循環するRNA分子を分析することで、この疾患の早期発見が期待される。妊婦の病気や死亡率を減らすための新たな治療法の選択肢を開く可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部