インド政府は1月19日、同国の研究者らがマシンラーニングの手法を使い、がんの一種である多発性骨髄腫のリスク予測システムを開発したと発表した。
インドの研究者グループが、がんのリスク予測を確実に行うためのシステム開発を目的とする研究に着手した。グループを率いるのは、インドラプラズサ情報技術研究所(IIIT-Delhi)のアヌバ・グプタ(Anubha Gupta)教授および全インド医科大学デリー校 (AIIMS-Delhi)のがん研究所リーダーであるリツ・グプタ(Ritu Gupta)教授。
このチームは、マシンラーニングの手法を使い、多発性骨髄腫(別名カーレル病)のための、改訂版リスク・ステージングシステム(MRS)を開発した。多発性骨髄腫は、骨髄に存在する白血球の一種であるプラズマ細胞のがん。このがんにかかると、プラズマ細胞が、がん化して増殖し、骨病変に加え、免疫系や腎臓の障害、赤血球細胞数低下など が起こる。
今回の人工知能(AI)を使ったステージングシステムは、多発性骨髄腫と診断された新規患者(NDMM)を対象に開発された。
研究者らは、まずNDMM患者のトレーニング(訓練)データを使ってモデルを開発し、2つの新規テストデータで検証を行った。続いて、モデルが予測したリスク分類を従来の国際病期分類(ISS)および改訂国際病期分類(RISS)と厳密に比較し、予測に基づく無増悪生存率(PFS)や全生存率(OS)の有効性を確認した。
このAIモデルは、年齢のほか、カルシウム、アルブミン、B2M(マイクログロブリン)、腎臓機能を示すeGFR、およびヘモグロビンという、ラボの検査で容易に測定できるパラメーターを使用するのが特徴。
教授らは、より大規模なトレーニングデータに基づいたマシンラーニングモデルの開発を行うことで、高リスクの多発性骨髄腫の患者に対して、前もってリスクを予見し、適切な強度の治療を選択することが可能になると考えている。また、米多発性骨髄腫研究財団(MMRF)のデータを使ったテストで、民族や人種により、予測に微妙な差異がある可能性があることも分かった。
リツ・グプタ教授はこのシステムについて「効率的で導入が容易なリスク予測システムで、地理的または経済的な問題でゲノム検査が不可能な場合などに有用だ」と語る。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部