インド工科大学マドラス校 (IIT-M) は、把持時における物体の安定化に際して親指と小指の力の間に独特の相関を発見したと発表した。1月18日付。研究成果は科学誌 scientific reports に掲載された。この成果は、親指の可動域に障害を持つ人のリハビリテーションに活用されることが期待される。
物をつかむことは、私たちが日常的に行っている手の動きの一つである。人間の手の指の中で、親指は把持物を安定させるために重要な役割を担っています。親指が不安定な状況で、他の指はどのように安定性維持に寄与するのか、未だ明らかになっていない。人差し指と小指は把持したものに回転性の変化がある際に安定化を図るために考慮した周辺指であり、一般に小指は人差し指よりも握力への寄与が小さいことから、小指は他の指と比較すると常に弱い指と考えられている。
IIT-M応用力学科のバヌバシー・ラジャクマル (Banuvathy Rajakumar) 氏とバラダン・エスケーエム (Varadhan SKM) 博士は、力センサー付きの特殊なハンドルを作成し、ハンドルの把持中に親指を上下方向に平行移動させた場合における、ハンドルを安定に把持するための指と親指の力を測定し、その変化を評価した。
その結果、親指を下方向に移動させたときの小指の握力の増加は、親指を上方向に移動させたときの人差し指の握力の増加の2倍であることが分かった。また、親指の手根関節の屈曲運動(下方への移動)と伸展運動(上方への移動)の際に、小指の接線力が大きく上昇・下降することが観察された。
著者らは、親指を動かしての把持において他の指と比較して小指がはっきりとした親指との連動挙動を示すことを確認し、親指と小指の間に解剖学的/形態学的関係が存在することが示唆されると結論づけた。親指と小指の力の独特な相関が、中枢神経系の活性によるものなのか、ただ機械的なものなのか、継続的に調査する必要がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部