2022年04月
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金型、タービンブレード、航空宇宙部品など高価値部品を自律的に修理・修復する新技術開発 インド

インド科学技術省は2月18日、金型、タービンブレード、その他の航空宇宙部品などについて、人の手をほとんど必要とせずに高価値の部品を完全かつ自律的に修理・修復する技術を開発したと発表した。この技術は、修復・修理産業を次のレベルへ飛躍させ、「自立したインド」の実現のための実行可能な最先端レーザー製造エコシステムの核となることが期待されている。

溶接、溶射などの既存の修理技術は不安定で、正確性や精密さが不十分である。しかも、既存の技術は手作業であり修理の質は担当者の技量に左右される。そこで、インド工科大学ボンベイ校(IIT-B)のRamesh Kumar Singh教授は、レーザーを使う優れたプロセス制御で、人の介入を最低限からゼロにして完全に自律化する新しい技術を開発した。これにより、品質と再現性を向上させた修復が可能になる。

修理が必要な欠陥部品はレーザースキャナーで自動的にスキャンされ、損傷が検出されれば、一定のアルゴリズムに基づいて成膜経路が特定される。レーザー指向性エネルギー堆積法(Laser-Directed Energy Deposition: LDED)(※1)技術を使って材料を蒸着し、その後、仕上げ加工と修復後の製品の自動検査を行うもの。

このシステムは、ロボットによる修復システムで構成され、走査経路の計画、損傷検出、蒸着、仕上げ、検査というすべての主要な作業で自律的に機能するように設計されている。また、アディティブ・マニュファクチャリング(※2)による修復の主要な制約の一つである好ましい残留応力を誘発するために、物理ベースのモデルからプロセスパラメータを取得する予定。同教授によれば、高価値の部品の修復において、科学技術の活用で新たなソリューションの開発に道を開くものである。

現在、レーザーエネルギー蒸着システムと欠陥スキャンシステムの2つのシステムの最終的な統合が進められており、プロジェクトは技術成熟度レベル(Technology Readiness Level)で7番目に位置している。同教授は、産業界への導入に向けて、Bharat Forge、Aditya Birla Science and Technology CompanyおよびInterface Design Associatesの3社と提携している。

「開発された技術は非常にインパクトがあり、製造業の修復・修理部門にとって画期的なもので、大きな市場ポテンシャルを秘めている。この技術で再生できる部品は、非常に価値の高いもの。この技術によって可能になる精度や正確さのレベルは驚異的で、現在の最先端技術をはるかに凌駕している。さらに、この技術によって、20数点の部品を修理することで、機械全体のコストを回収することができると見込んでいる」と同教授は述べている。

開発したシステムの全サブシステムを示す図。成膜ヘッドの操作には、6軸のロボットマニピュレーターと、ガントリー型の5軸システムの2種類がある。3Dプリントされた中空シリンダー、プレート、H13工具鋼とCPM 9V鋼のハードフェイスのパンチも示されている

(a) 部品損傷評価のためのスキャニングシステム。レーザースキャナーから連続的に得られる2次元プロファイルとロボットのエンドエフェクタの位置をデータ融合することで、3次元の点群を取得可能。(b)と(c) 実際の部品とスキャンした3次元自由曲面部品

(※1)LDED:収束されたレーザーの熱エネルギーを利用して材料を溶解・積層する造形プロセス。
(※2)アディティブ・マニュファクチャリング:3Dプリンターによる制作・製造。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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