2022年04月
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CO2回収・利用で固体吸着剤合成の新たな方法を発見 インド

インド科学技術省は3月10日、二酸化炭素(CO2)回収・利用のための新しい固体吸着剤を合成する方法を発見したと発表した。

炭素の回収と利用は、CO2排出量の削減に焦点を当てた研究の成長分野であり、すでにいくつかの産業的な進歩が実証されているが、どの技術も経済的に実現可能かつ完全なCO2回収・利用ソリューションを提供することはできていない。そのため、新しい固体吸着剤に関する基礎研究は、CO2回収と利用のための重要な材料を提供する可能性がある。 インド科学教育研究大学(Indian Institute of Science Education and Research: IISER)コルカタ校のRahul Banerjee教授の研究グループは、科学技術省の「ミッション・イノベーション」プログラムの支援を受けて、特にCO2回収と利用のための新しい固体吸着剤を合成する方法を実証しており、この度、マイクロ・ポーラス(細孔の直径が 2 nm 未満の多孔質材料)およびメソ・ポーラス(細孔の直径が 2 nm~50 nm)空隙にCO2を捕捉できる特殊なナノ粒子や微粒子を発見したという。

今回合成された表面に明確な物理的特性を持つ新規材料として、COF(Covalent Organic Frameworks)(※)-グラフェンヤヌス薄膜のような多孔性共有結合性有機フレームワークについては、「Journal of American Chemical Society」に、多孔性共有結合性有機ナノチューブは、「Nature Chemistry」に、また、COF被覆ゼオライトは、「Journal of American Chemical Society」に掲載された。

2次元グラフェンシートをグラフター(grafter)として選択することで、COFとグラフェン間の相互作用(非共有結合)を通じてDCM-水界面に柔軟な多孔質ヤヌス膜を形成させることで、COF-グラフェンヤヌス薄膜を設計・作成することに成功した。新たに設計されたCOF被覆ゼオライトは、その高い表面積と化学的安定性により、産業界におけるCO2貯蔵の優れた候補となり得るというもの。

COF被覆ゼオライトは、弱酸で処理した後でも高いCO2吸収量を示したことから、工業用途に適している。COFコーティングは、水分、弱酸、水によるゼオライト構造の劣化を防ぐことができた。また、1バール、293KでのCOF被覆ゼオライトのCO2取り込み(吸着)は 132cc/gであり、同条件でのゼオライトのデータを凌駕している。

同研究グループは、新しいボトムアップのアプローチによって、これまで知られていなかった純粋な共有結合を持つ有機ナノチューブ(Covalent Bonded Organic Nanotubes : CONTs)を最近発見した。ゼロ次元共有結合有機ケージや、2次元・3次元共有結合有機フレームワークはこれまでにも報告されていたが、1次元有機ナノチューブの合成は過去に報告されていない。

最近合成された有機一次元ナノチューブは、機能化、合成条件、BET表面積321 m2 g-1という多孔性において、類似のカーボンナノチューブ(CNT)よりも優位性を持っている。1気圧、293Kで60-80cc g-1のCO2吸着能力を示し、効率的なCO2吸着の有望な候補である。さらに、可視光(400~700nm)の照射により、吸着したCO2をCOに変換する(130-200μmol g-1 h-1)光増感能力も有しているという。

(※)COF(Covalent Organic Framework):共有結合性有機構造体

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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