インド工科大学マドラス校(IIT-M)は3月22日、マビカ・サドハカ(Malvika Sudhakar)氏、カルシク・ラマン(Karthik Raman)博士、ラグナタン・レンガスワミィ(Raghunathan Rengaswamy)教授が、がんの発生や進行に重要な遺伝子を予測するための新しいモデルを提唱したと発表した。研究成果は学術誌 Scientific Reports に掲載された。
今回提唱したモデルはcTaG(classify TSGs and OGsの略)と名付けられ、TSGs(Tumour Suppressor Genes)は腫瘍抑制遺伝子を、OGs(Oncogenes)はがん遺伝子をそれぞれ意味する。研究チームは、TSGsとOGsを分類することで、がんの発生や進行に直接的な役割を果たす未知のドライバー遺伝子を見つけることを目的に研究を行った。
研究チームは、突然変異のデータに基づいてドライバー遺伝子を同定する二つの方法を用いた。一つは、遺伝子の変異率を利用した方法で、変異率が有意に高い遺伝子をドライバー遺伝子として同定する。もう一つは、リファレンスデータが変動した場合、出力データもそれに応じて変動させる方法で、突然変異の繰り返し発生だけでなく、突然変異の機能的影響も考慮してドライバー遺伝子を同定する。
解析の結果、新しいドライバー遺伝子だけでなく、既知のTSGsとOGsもともに同定されたことから、cTaGモデルの性能の妥当性が確認された。また、一般的なドライバー遺伝子を検出ツールMutSigCVとの比較も行った結果、cTaGは既知のドライバー遺伝子だけでなく、変異率の低い未知のドライバー遺伝子も同定できることが確認された。
インド・バンガロールにある国立生物科学センターのサバリナサン・ラドハクリシュナン(Sabarinathan Radhakrishnan)博士は、この論文について次のような見解を示した。
「この研究は、機械学習の手法を用いて、異なる組織型の複数のがんゲノムから体細胞変異を同定し、ドライバー遺伝子に関連した突然変異の特徴を決定しました。変異頻度ベースのドライバー検出では見逃しがちな希少なドライバー遺伝子の発見できる点が、このアプローチの主な利点です」
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部