2022年04月
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単一光子の量子性...アインシュタインの「現実」概念の間違いを実験で証明 インド

インド科学技術庁(DST)は「我々が考えているような『現実』(Reality)は存在しないかもしれないということを証明する実験を行い、量子力学の予言を確固たるものにした」と発表した。1月27日付。

アインシュタインは、「誰も見ていないときに、本当に月がないと思うか?」という有名な問いを残した。それは、日常的に信じられている現実主義の概念について、量子力学の予言を疑い、「測定されていないときでも、システム(系)はどの瞬間にも明確に定義された性質を持っている」ということを示唆するものであった。

現実主義を検証する注目すべき方法は、レゲット・ガーグの不等式(Leggett-Garg inequality)であった。それは、1985年にアンソニー・レゲットとアヌパム・ガーグが考案したもので、測定値の間の相関を探ることで、量子則か古典則に拠るものかを判断するものだ。

このような不等式を実験的に反証することは、現実主義を反証するだけでなく、量子力学がミクロの世界に限定されず、より大きな対象物にも適用できることを確認することになる。これにより、単一光子の非古典性または量子性を利用して、安全な情報伝達が求められる今日の量子通信や量子センシングの技術的応用に道を開く可能性がある。単一光子は、安全な量子通信のための主要なツールであり、量子性を明確に証明することは、情報伝達の信頼性を確保する上で重要な役割を果たすことになる。

レゲットとガーグは、非常に大きな対象物の量子性を理論的に検証できることに気づいた。その不等式は、現実の世界において、現実主義が正しいかどうかを教えてくれるかもしれない。近年、超伝導流体や光子、原子核、微小結晶など、さまざまな量子系で行われたレゲット・ガーグ実験により、ミクロの世界が非現実(non-real)であることが証明されている。そのために、それを乱すことなく粒子を測定する方法を見出してきた。

しかし、これらの実験にはいくつもの限界がある。世界中の科学者が、完全に決定的な実験的検証を達成するために、レゲット・ガーグの不等式に反することを示すことで実在性の概念を覆すことで、より優れた技術と適切に設計された戦略を打ち出そうとしている。

DSTの自治機関であるラマン研究所(RRI)は、この難題に取り組み、単一光子を研究することによって、レゲット・ガーグの不等式を大幅に破る実験を行った。

実験はバンガロールにあるRRIの量子情報・計算(Quantum Information and Computing : QuIC)研究所でウルバシ・シンハ(Urbasi Sinha)教授の主導で実施され、コルカタにあるボース研究所(Bose Institute)とS.N.ボース基礎科学センター(S.N. Bose Centre for Basic Sciences)の研究者らの理論的貢献が重要な役割を果たした。

『PRX Quantum』誌に発表されたこの研究は、レゲット・ガーグの不等式に反することを示した最初の曖昧さのない実験であり、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンのジョナサン・ハリウェル教授は「光子でできた系におけるマクロリアリズムの最も確実なテスト」と表現した。

ウルシバ教授は、「我々の分析では、レゲット・ガーグの不等式を抜け道なく破っているだけではないことを示すことができた。つまり、量子力学の予言と驚くほど一致することも示しており、我々の実験は、単一光子の量子性を抜け穴なく証明するものでもある」と話している。

この研究は、インド電子情報技術省(MeiTY)とDSTの助成金によって支援された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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