インド理科大学院(Indian Institute of Science: IISc)は、インド国内で最大規模となるスーパーコンピューター「Param Pravega」を導入し、運用開始したと発表した。2月3日付。これは、インド政府が推進する国家スーパーコンピューティングミッション(National Supercomputing Mission: NSM)(*1)の一環。
このシステムは、先進コンピューティング開発センター(Centre for Development of Advanced Computing: C-DAC)が設計したもので、3.3ペタフロップス(*2)の演算能力を持もっている。同システムを構築するために使用されるコンポーネントの大半は、インド国内で製造、組み立てされ、ソフトウエアスタックもC-DACが開発したインド製となっており、インド政府が推進する「Make in India」政策に沿ったものだ。
IISc の Param Pravega システムは、CPU ノードには Intel Xeon Cascade Lakeプロセッサー、GPUノードには NVIDIA Tesla V100カードを使ったヘテロジニアスノードの混在型システムとなっており、ハードウェアは、AtoS社のBullSequana XH2000シリーズシステムで構成されている。このマシンには、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)アプリケーションを開発・実行するためのプログラム開発ツール、ユーティリティ、ライブラリーが多数搭載されている。
IIScは、数年前に設立された最先端のスーパーコンピューティング施設をすでに持っている。2015年には、当時国内最速のスーパーコンピューターであったSahasraTを導入している。教員、研究者や学生はこの施設を利用して、例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの感染症分野に関する研究を実施。ウイルスの侵入と結合のモデル化、細菌やウイルス疾患におけるタンパク質の相互作用の研究、抗菌・抗ウイルス作用を持つ新しい分子の設計など、さまざまな社会的意義の高い分野でインパクトのある研究を進めている。
研究者はこの施設を利用して、グリーンエネルギー技術のための乱流シミュレーション、気候変動とその影響の研究、航空機エンジンや極超音速飛行体の解析など多くの研究も行っている。これらの研究や取り組みは、Param Pravegaの導入によって大幅に強化されることが期待されている。
(*1) National Supercomputing Mission(NSM):科学技術庁(DST)と電子情報技術省(MeitY)が共同で主導し、C-DACとIIScが実施している。これまでにインド理科大学院(IISc)、インド工科大学群(IITs)、インド科学教育研究大学(IISER)プネ校、ジャワハラルネルー先端科学研究センター(Jawaharlal Nehru Centre for Advanced Scientific Research:JNCASR)、インド北西部にある学研都市モハリにある国家農業食料バイオテクノロジー研究所(National Agri-Food Biotechnology Institute: NABI-Mohali)および、C-DACに合計10台のスーパーコンピュータシステムが導入され、その累積演算能力は17ペタフロップスとなっている。これまでに国内の約2,600人の研究者が約310万回の計算ジョブを成功させており、ゲノムや創薬のためのプラットフォーム開発、都市環境問題研究、洪水警報・予測システム構築、通信ネットワーク最適化など、教員や学生の主要な研究開発活動に大きく役立っている。
(*2) 1ペタフロップスは1秒間に1000兆回の浮動小数点演算行う能力。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部