2022年05月
トップ  > インド科学技術ニュース> 2022年05月

マイクロプラスチックの汚染物質で魚に成長障害の可能性 インド・カウベリー川

インド理科大学院(IISc)は4月11日、同国のカウベリー川のマイクロプラスチックなどの汚染物質が、魚の成長障害を引き起こしている可能性を明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌 Ecotoxicology and Environmental Safety に掲載された。

IIScの分子生殖・発生・遺伝学部(MRDG)のウペンドラ・ノントンバ(Upendra Nongthomba)教授は長年、クリシュナ・ラジャ・サガラ(KRS)ダムの上流域でカウベリー川の魚を食べてきたが、最近魚に異常がみられるようになり、水質との関係性を考えるようになったという。

そこで、ノントンバ教授らの研究グループは、KRSダムの汚染と魚類への影響の可能性について調査するため、水の流れの速さが異なる3地点から水サンプルを採取し、物理的・化学的パラメータを分析した。その結果、流れの遅い場所や淀んだ場所で採取されたサンプルは、溶存酸素量(DO)が低くなっていることが分かった。また、これらの場所の水には、水質汚染の生物学的指標となる微生物が含まれていた。さらに、ラマン分光法を用いて、マイクロプラスチックと農業や製薬業で使用されるシクロヘキシル官能基をもつ有毒化学物質を検出した。

次に、水中の汚染物質が野生魚に見られる発育異常の原因となるかを調査した。ゼブラフィッシュの胚を、3地点から採取した水で処理したところ、流れの遅い地点と淀んだ地点の水を処理した魚は、骨格の変形、DNA損傷、死亡率の増加などが見られた。微生物をろ過した後でも同様の異常があり、マイクロプラスチックとシクロヘキシル官能基が魚の異常の原因であることが示唆された。また、発育異常があった魚の細胞からは、DNA損傷の原因として知られる活性酸素種(ROS)が検出された。

ノントンバ教授 は、「まだ人間に影響を与える濃度ではないかもしれないが、長期的な影響を排除することはできない」と懸念をあらわにした。研究グループは今後、マイクロプラスチックがどのように入り込み、影響を与えるのかについても明らかにしたいと考えている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る