2022年05月
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脳梗塞の後遺症リハビリ用に3Dプリントと光センサーでウェアラブル機器を開発 インド理科大学院

インド理科大学院(IISc)は5月4日、同大学院の研究チームが脳梗塞の後遺症リハビリ用に3Dプリントによるウェアラブル・デバイスを開発した、と発表した。

脳梗塞による身体障害の数少ないリハビリの方法の1つが理学療法だ。ただ、障害の程度によっては数カ月もの期間を要し、リハビリ期間中は、治療のために毎日の通院が必要になることもあり、患者や医療従事者の負担が大きい。また、医師による患者の訪問診療やリモートで患者をモニターできる従来のデバイスは高額であるなど、なかなか利用できないのが現状である。

今回、IIScの研究チームは、3Dプリント技術を使って患者の身体に合わせてカスタム製作できる、柔軟なウェアラブル・デバイスを開発した。素材にはシリコン・ベースの透明・柔軟な素材を使い、光センサーにより患者の手足や指の動きを感知し、感知したデータを読み込んで保管し、インターネットで送信できる。遠隔操作も可能であるため、理学療法士がリモートで患者に指導することができる。

研究したIISc物理学部のアヴィーク・ビド(Aveek Bid)准教授は、「廉価で、患者さんが使いたい時にいつでも使えるデバイスを開発したいと考えていました。使いやすく、フィードバックも得られるデバイスを目指して開発に取り組みました」と開発の意図を語った。

このデバイスは、ボールを握った時の握力や、足を曲げた角度などのデータを医師や患者に提供する。こうしたフィードバックは、医師にとって患者の状態を把握するうえで重要であるだけでなく、患者が症状の改善を目指してリハビリに励むモチベーションにもなる。

デバイスには光源と探知機が装備されており、基本的な光の特性(屈折と反射)を利用して身体の動きを感知する。患者が指や腕を動かすと柔軟な素材の形状が変化し、その変化によって光の経路が変化して光の特性が変わる。この特性変化を数量的な単位に変換して診断に使用できる。従来の類似のデバイスは、指が屈曲したことだけを感知できたが、今回のデバイスは指の各関節の屈曲度まで感知できるようになった。

このデバイスはインドで設計・製作され、10カ月間の試験で感度に変化がなく安定していることが確認された。現在、特許申請中で、価格は1,000インドルピー(約1,600円)以下になる予定。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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