インド工科大学マドラス校(IIT-M)は5月9日、地球圏外での製造技術を開発する研究グループを設置した、と発表した。
インドは打ち上げ用ロケットや衛星製造のための応用技術分野で世界を牽引している。近い将来、宇宙空間で機器を製造して組み立て、さらにそうした機器を地球に持ち帰って使用する技術が必要になると予想されている。今回設置された研究グループは、インドが現在持つ地球上での技術と、将来的に必要になる地球圏外製造(ExTeM)技術とのギャップを埋めることを目的とし、インドで初めての微重力自由落下塔研究施設で研究を行う。
宇宙で必要とされる製造技術は、限られたスペース、限られた電力、微小重力の影響などの制限があることから、地球上の製造技術をそのまま適応することはできない。研究グループは今後、金属の3Dプリントおよび機能的な光学ポリマー、火星の土を使った水を使用しないコンクリート、単結晶ダイヤモンド、太陽電池、発砲金属などの幅広い製造技術を開発して、現在の技術的なギャップを埋める研究に取り組む。宇宙での製造技術は作業空間やエネルギー、微重力などによる制約があり、地上での製造技術とは大きく異なる。また地球上からの輸送コストという問題もある。現在、自由落下塔でいくつかの製造工程を実験中だが、研究グループは微重力下でこそ可能となる制御機能、機器デザインなどにも着目し、研究を進める予定。
将来的には、衛星軌道に浮かぶ工場や地球圏外の工場で、民間企業が宇宙で必要な機器や素材を製造するようになる、とグループは予測する。
ExTeM研究グループの主任研究員であるサシヤン・スビア(Sathyan Subbiah)氏は、「遠く離れた惑星での永住を目指すなど、人類による宇宙探索はこれまでにないレベルにありますが、これは、人間が長い時間を宇宙船で過ごすことを意味します。そうした長期間の宇宙旅行は、地球から持って行く機器を減らし、必要なものを宇宙空間、衛星軌道、または他の惑星上で製造・再使用する技術があって初めて実現できます」と、開発する技術の重要性を語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部