2022年06月
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量子コンピューターで重ね合わせの原理やボルンの規則の原理を証明 インド・ラマン研究所

インドのバンガロールにあるラマン研究所(Raman Research Institute)の物理学者グループが量子コンピューター上の実験で、量子力学の基本原理を数学的に証明できることを示した。科学誌nature indiaが5月25日に伝えた。研究成果は学術誌 Physical Review Research に掲載された。

ラマン研究所のウルバシ・シンハ(Urbasi Sinha)博士が率いるグループは、量子コンピューターを使って重ね合わせの原理(superposition principle)やボルンの規則(Born rule)などの量子力学の基本原理を直接証明できないだろうか、と考えた。重ね合わせの原理とは、量子オブジェクトは波状の振る舞いをし、複数の存在可能な状態にあるオブジェクトが観測時点まで重複した状態で存在すると仮定する。ボルンの規則は、波動関数にもとづいて、ある粒子が特定の場所に存在する確率を割り出す簡易な計算式のことだ。

この2つの原理を証明するため、研究グループは、ボルンの規則の確率をチェックするソロキン・テストと、重ね合わせの原理が正しいかどうかをチェックするペレス・テストの2つのテストを実施した。超伝導回路を装備した量子コンピューターでこれらのテストを超低温で実施するために、研究グループは、新規アルゴリズムと量子マシンコードを開発した。超伝導回路は超伝導量子ビット(0,1)またはキュービット(0、1、またはそれらの重ね合わせ)を情報として処理する。

実験のデザインによって生じるバイアスを防ぐため、ラマン研究所のグループは2つのテストを同じコンピューターで別々に、または同時に実行した。その結果、量子力学が複素数に基づく数学的な構造を持つことを証明した。

論文を発表した研究者らは、「今回開発した新規アルゴリズムを他の量子コンピューターのアーキテクチャにも適用して、実験結果を独自に判定することも可能です」と指摘し、「量子コンピューターのパフォーマンスの評価にこれらのテストをベンチマークとして使うことも可能です」と説明した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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