2022年07月
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寿命が長く高速充電も可能...新しい固体電池の製造技術を開発 インド理科大学院

インド理科大学院(IISc)の研究者らは、高速充電可能な固体電池の製造技術を開発した。6月2日付発表。この研究成果は学術誌のNature Materials に掲載された。

固体電池はいずれ、あらゆるポータブル電子デバイスに使用されているリチウムイオン電池に取って替わられると予測されている。固体電池は、繰り返し使用するうちに内部にデンドライトと呼ばれる薄いフィラメントが生じて電池がショートし使い物にならなくなる、という問題があった。これに対し、IIScの研究者らが今回、次世代固定電池の機能が低下する仕組みを解明し、固体電池の寿命を延ばして充電を速める技術を開発した。

現在、スマートフォンやノートパソコンなどに使われているリチウムイオン電池は、液体電解質が鉄やコバルトなどの遷移金属酸化物でできた正電荷をもつ電極(カソード)と、グラファイトでできた負電荷をもつ電極(アノード)に挟まれてできている。しかし、リチウムイオン電池には高温になると液体電解質が出火するという大きな問題がある。また、グラファイトは金属のリチウムに比べて充電できる量が少ない。

解決策として、液体電解質の代わりに固体のセラミック電解質を使い、グラファイトを金属リチウムに替えることが考えられる。セラミック電解質は高温下で機能が向上するため、インドのような熱帯気候の国では特に有用である。しかし、金属リチウムを使用するとフィラメントが生じて固体電解質に侵入し、電池をショートさせてしまう。

研究グループはまず、デンドライトが生じる原因は、電極のひとつに早い段階で生じる微小な隙間であることを発見。次に、電解質の表面に耐火金属の薄いレイヤーを追加すると、デンドライトの生成を遅延して電池の寿命を延ばせるほか、電池をより速く充電できることを突き止めた。

IISc固体物理および構造化学部のナガファニ・エートゥクーリ(Naga Phani Aetukuri)助教は今回の発見により、「高性能の固体電池の製造戦略が非常にシンプルになりました。隙間が生じないような方法を考えるだけですから」と話している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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