新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のロックダウン中に、インドの都市部で野鳥の目撃例が増えたという。これについて科学誌 nature india が6月6日に取り上げた。研究成果は学術誌 Biological Conservation に掲載された。
2020年3月25日からインドで実施されたロックダウン中、インドの各都市で野生動物の目撃数が増加した。これが都市部での人間活動の減少によるものなのか、人々がロックダウン中に普段より自然に目を向けるようになったからなのか、科学者が原因を調査した。
一般市民が目撃した鳥類を報告するオンラインプラットフォームeBirdによると、2020年3月と4月にかけて、1回の野鳥観察で報告された鳥の種類が前年に比べて16%増加した。今回調査したカナダ・ブリティッシュコロンビア大学のサミート・グラティ(Sameet Gulati)教授は、ロックダウン中、自宅のバルコニーでの野鳥観察がブームになったという報告があり、この行動変化が報告データに表れた、と当初考えた。
実際のところ、eBirdによると、多くのユーザーは、ロックダウンが始まった後に野鳥観察を始めたという。野鳥報告の増加はインドのベンガルール、チャンディーガル、チェンナイなど、人口密度の高い20都市部で顕著であった。
ところが本当の理由は違っていたようだ。グラティ教授がeBirdのデータからロックダウン中に登録したユーザーを除いて、ロックダウン前後のデータを比較したところ、ロックダウンが始まって2、3週間後に野鳥の種の報告が増加していた。このことから、野鳥観察の報告数の増加は観察者の増加によるものではなく、都市部で野鳥が増えたためであることが判明した。ベンガルールでは、ロックダウン以前には見られなかったヒメコガネゲラ(キツツキの一種)も観察された。
これまでの調査で、都市部の光公害が鳥の巣ごもりのタイミングを狂わせることや、鳥が配偶者を見つけたり、縄張りを守ったりするのに重要なさえずりを都市騒音が妨害することが分かっている。グラティ教授は今回の調査の結論として「野鳥を都市部から締め出しているのは人間の活動だということが分かりました。我々が住む都市を野生動物に優しい場所にする必要があります」と語る。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部