インド理科大学院(IISc)は6月17日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連して短時間の会話で発生するエアロゾル(ウイルスを含む微粒子)の動きをコンピューターシミュレーションで分析し、どのような場合に感染確率が高まるかについて調べた成果を発表した。IIScとインド・ベンガ―ルにある国際理論科学研究センター(ICTS)、さらにノルウェー・ストックホルムの北欧理論物理学研究所(NORDITA)との共同研究で、研究成果は学術誌 Flow に掲載された。
COVID-19によるパンデミックが発生した当初、COVID-19は咳やくしゃみなどの症状を介して感染すると考えられたが、すぐに、無症状の感染者からも感染が広がることが分かった。しかし、対面での短時間の会話で発生するエアロゾルの伝播によるCOVID-19感染を詳しく調べた研究は少なかった。
そこで研究チームは、積雲の動きを理解するために開発されたコンピューターコードを変更し、エアロゾルの動きを分析するシミュレーションに適用した。シミュレーションでは、COVID-19感染の主経路と考えられている鼻だけでなく、ウイルスが目や口から感染する可能性も考慮した。
研究の結果、対話をする一方が話し手、一方が聞き手で双方が同じレベルで会話に参加しない場合、また背の高さが若干異なる場合に感染の確率が高まることが分かった。これは、両者が同程度の会話に参加している場合や背の高さが同じ場合は、エアロゾルが拮抗して感染の確率が低くなることによるとみられている。背の高さがかなり違う場合も感染の確率は低い。また両者がお互いに顔を約9度そむけるたけで、感染の確率が下がるという。
IISc航空宇宙工学部のスラブ・ディワン(Sourabh Diwan)助教授は、「日常における他者との接触が平常に戻っていくなかで、感染の広がりを最小限に抑えるには、予防対策をできる限り講じていくことが重要です」と研究の意義を語る。研究チームは引き続き、声の大きさや空調などがCOVID-19の感染に及ぼす影響についてもシミュレーションを行い、公衆衛生の政策担当者や疫学者と適切な感染予防ガイドラインについて協議を続けていく予定。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部