インドの天文物理学者が同国の宇宙望遠鏡を使ってブラックホールの誕生を示すシグナルをとらえた。科学誌 nature india が6月22日に報告した。
ブラックホールは、大質量星が激しい爆発を起こし、消滅した後に生まれる。大質量星は崩壊時にガンマ線バースト(GRB)を起こすため、研究者らはGRBを使ってブラックホールが生まれる正確なタイミングを理解できると考えている。しかし、GRBの継続時間は1秒以下から1,000秒間とばらつきがあるため、天体望遠鏡がGRBをとらえるのは容易ではない。
これに対し、アストロサット(AstroSat)と呼ばれるインドの宇宙望遠鏡は、カドミウムジンクテライドX線検出器(CZTI)を使ってGRBが放射する高エネルギー光子を検知できる。光子は宇宙空間を光の速さで飛散し、地球にも到達する。アストロサットは各光子の到着時間、エネルギー、および位置を検知できるほか、宇宙空間で発生しているイベントを紫外線、可視光線、X線の波長で観察できる。2015年9月の設置以来、アストロサット CZTIはブラックホールの生成過程で放射された500以上のGRBシグナルをとらえたという(年間平均は75 GRB)。
インド工科大学ボンベイ校(IIT-B)の天文物理学者であるヴァルン・バレラオ(Varum Bhalerao)氏は、「CZTIはGRBのX線偏光を計測できるため、研究者はその計測値を使って新しく生まれたブラックホールのすぐ外側で何が起こっているのかを理解することができます」と説明する。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部