インド工科大学マドラス校(IIT-M)の研究者が、光誘導デウェッティング(Photoinduced dewetting)に関する新しい理論を発見した。6月28日付け発表。研究成果は学術誌 International Communications in Heat and Mass Transfer に掲載された。
光誘導デウェッティング(脱濡れ)は最近注目されている技術で、固体の表層に置かれた液体やポリマーからなるフィルムを特定の波長の光に当て、その化学合成を変化させる技術である。この技術は、マイクロやナノレベルの極小構造のテンプレート作成に利用できる。従来のデウェッティング技術と異なり可逆的で、デウェッティングの過程がシンプル、という長所がある。
具体的には、放射線照射によって一度形成したパターンを消去・変化させたることができるため、書き換え可能なデバイスを製造できる。また、プロセスを瞬時にオン・オフでき、光は物質の表面に接触しないためクリーンで、毒性のある溶液などを使用する必要がない。こうした長所により、特に細胞・組織工学などの生物学分野や太陽電池、プリンテッド・エレクトロニクス分野で、低コストで効率的なデウェッティング技術として使用できると期待されている。
しかしこれまで、光誘導デウェッティングに関して技術面での実験は数多く行われてきたが、理論やコンピューターモデリングによる研究は限られていた。
そこで今回、IIT-Mのスワシ・エレカト(Swathi Erekath)氏とスリーナム・K・カルパティ(Sreeram K.Kalpathy)教授が界面流動力学モデルを使い、光誘導デウェッティングによるパターン形成の背後にある物理特性およびメカニズムを解明しようと試みた。論文で示されたモデルは、複雑で高度な光誘導デウェッティングに応用可能だ。
インド工科大学ガンディーナガル校(IIT-GN)のスリハリタ・ロウトゥ(Sriharitha Rowthu)教授は今回の論文について、「光工学的に誘導されたナノ・パターニングに関する科学的な洞察を提供しました。今後、費用対効果が高く、再利用可能で環境にやさしいポリマー印刷技術につながるでしょう」と成果を称えた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部