2022年08月
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1kgのバイオマスから100gの「グリーン水素」を製造―石炭燃料からの転換 インドで開発

インドでは、さまざまな分野の多様なプロセスにおいて約500万トンの水素が使用されていると言われている。そして、水素の市場規模は今後数年間で大きく成長すると予想されている。しかし、現在使用されている水素の大部分は、水蒸気メタン改質ルート(Steam Methane Reforming Route)と呼ばれるプロセスを通じて化石燃料から作られていることから、環境の観点からは課題も残っている。

インド理科大学院(Indian Institute of Science: IISc) は7月12日付けで、バイオマスから水素を生成する革新的な技術を開発したことを発表した。IIScの研究究チームのリーダーは、エネルギー研究学際センター議長で持続可能技術センターのS・ダサッパ(S Dasappa)教授である。彼のチームは、再生可能エネルギー源であるバイオマスからグリーン水素を抽出する新しい方法を発見した。

このプロセスは 2つのステップで構成。最初のステップでは、酸素と蒸気を使用する新たに開発された反応器の中で、バイオマスが合成ガス (豊富な水素を含む燃料ガス混合物) に変換される。次のステップでは、独自に開発された低圧ガス分離装置を使用して、合成ガスから純粋な水素を生成するものである。

ダサッパ教授の研究室で開発されたこれらの技術(プロセス)を利用することで、非常に効率的にグリーン水素が生成されることが明らかになった。同教授によると、1000g のバイオマスには60 gの水素しか存在しないが、このプロセスを使うことで、1000g のバイオマスから100 g の水素を生成することが可能となった。その理由は、このプロセスにおいては、水素を含む蒸気が均一系反応(homogeneous reaction)と不均一系反応(heterogeneous reaction)の両方を引き起こすためであると。ちなみに、均一系反応では反応物質の状態は単相(single phase)であるのに対し、不均一系反応では2相かそれ以上にある。

この新しいプロセスを使用して生成するグリーン水素は、別の理由でも環境に優しく、カーボン・ネガティブと言えるものだ。つまり、このプロセスにより2種類の炭素ベースの副産物が得られるからである。その一つは、炭素吸収源として機能する「固体炭素」で、もう一つは、他の付加価値製品に使用できる「二酸化炭素」である。

また、グリーン水素は、化石燃料から生成された水素を使用している多くの産業でも利用可能である。例えば、鉄鋼産業では鉄鋼の脱炭素化に、また、農業分野ではグリーン肥料の製造が可能となる。さらに、メタノールとエタノールの生産にもグリーン水素は使用できると考えられている。

同大学のプレスリリースによると、ダサッパ教授は「この固有の技術は、モディ首相が推進する"自立したインド"(Atmanirbhar Bharat)政策の目標を達成するための一歩である」としたうえで、「この技術は、燃料としての水素の使用を促進し、化石燃料への依存を減らすことを目的としたインド政府のイニシアチブである"国家水素エネルギー・ロードマップ"ともうまく合致・調和している」と述べている。

この研究プロジェクトは、インド政府の新・再生可能エネルギー省と科学技術省の公的支援に加えて、水素燃料電池バス用に日産0.25トンの水素を生成する技術の開発においては、インド石油公社(Indian Oil Corporation Limited)のサポートも受けている。

IISc 燃焼・ガス化・推進研究所 (CGPL) の酸素蒸気(oxy-steam)ガス化装置
(IIScプレスリリースより)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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