2022年08月
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新型コロナ、iPS細胞由来の肺組織に感染・増殖―新治療薬開発に期待 インド

インドのベンガルールに本社を置くEyestem Research社を中心とする研究チームが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の肺組織に感染し、増殖することを明らかにしたと、科学誌 Nature India が7月27日に伝えた。

本成果は学術誌 Cellular Physiology に掲載された。本研究成果をSARS-CoV-2感染のメカニズムを調べるモデルとして用いることで、同疾患の治療薬の開発や臨床試験に活用できる可能性があるとしている。

これまでのところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を治療するための抗ウイルス剤は開発されていない。細胞ベースの検証モデルがないことが、治療法開発の大きな障害になっている。

Eyestem Research社やThe University of Trans-Disciplinary Health Sciences and Technology(TDU)、Translational Health Science and Technology Institute(THSTI)の研究者を含む研究チームは、iPS細胞を培養・分化させて作製した肺組織をさまざまな種類の肺組織に分化させた。スパイクタンパク質を用いてその肺組織をウイルスに感染させ、スパイクタンパク質に特異的な抗体を使ってウイルスを検出するモデルを確立した。

感染した細胞を分析したところ、ウイルスが細胞に侵入して増殖するのを助ける特定の宿主受容体タンパク質が強く発現していることが判明した。そして、分子マーカーの同定を行うと、ミトコンドリアの損傷がCOVID-19重症化の重要な要因であることが示唆された。

このモデルは、COVID-19陽性の肺組織で見られるのと同様の細胞損傷と炎症反応を示しており、同疾患に対する治療薬の発見や臨床試験に利用できるだろうと研究者らは述べている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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