2022年08月
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優れたスイッチング特性と低消費電力を両立させた新たなメモリデバイス開発 インド

インド科学技術省は、データ記憶用に優れたスイッチング特性と低消費電力要件を備えたメモリデバイスを開発した。7月15日付け発表。

一般的に、電極間に絶縁膜を持つ抵抗メモリデバイスは、高性能で高密度なメモリを低消費電力でデータ保存するニーズに対応できる。このデバイスは、誘電体(電流を流すと分極する電気絶縁体)に強い電流を流すと、突然(2端子)抵抗値が変化する物理現象である「抵抗変化型スイッチング」という特性を持つ。このようなデバイスは、性能面で大きな技術的課題があり、これまで集中的に研究されてきたが、いくつかの技術的課題が残っており、実用化は容易ではない。

そこで、不揮発性で信頼性が高く、既存のシリコンベースのフラッシュメモリ技術よりもはるかに優れた性能を持つ「抵抗変化型メモリデバイス」の開発のために、これまで様々な研究が行われてきている。

今回、インド科学技術庁(DST)傘下の自治研究機関でベンガルル市(カルナタカ州)にあるナノ・ソフトマター科学センター(Centre for Nano and Soft Matter Sciences:CeNS)は、酸化ケイ素の代替となる酸化ハフニウムという化学物質を用いて、データストレージ用の優れたスイッチング特性を持つ低電力メモリデバイスを開発した。

研究では、電流を流すと分極する絶縁体である酸化ハフニウム(HfO2)を絶縁層として、スパッタリング成膜法が使われた。これは物理蒸着法の一つで、高エネルギーイオンで目的の物質から原子や分子を叩き落とし、基板上に堆積させる方法で、HfO2の抵抗変化特性は、成長温度とアニール条件を調整することでさらに向上する。アニールとは、材料の物理的・化学的特性を変化させて延性を高め、硬度を下げて加工しやすくする熱処理プロセスである。

その結果、これらの薄膜にアニールという熱処理を施すと、より高い濃度の酸素空孔(結晶格子の各位置から酸素が失われること)が生じることが分かった。この酸素空孔は、低電力動作の条件を整えるために重要な役割を果たす。そして、熱処理は酸化ハフニウム膜の結晶挙動と欠陥密度にも影響を与え、それによって抵抗変化率やデバイス性能に影響を及ぼした。さらに、このデバイスは優れた耐久性と高い保存性も示したという。

低セット/リセット電圧・電流のバイポーラ抵抗スイッチング挙動を示すAl/HfOx/ FTOデバイスのI-V(電流-電圧)特性を示す
(PIBリリースより)

この研究は、より効率的かつ実用的で、信頼性の高い抵抗変化メモリデバイスの開発に繋がることが期待されている。また、CeNSでは、この抵抗変化型メモリデバイスの小型化にも取り組んでいるとのことである。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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