インド工科大学マドラス校(IIT-M)の研究チームが、定置用蓄電システムに変革をもたらすバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)を開発した。7月13日付け発表。
充電済みの電解質を、原油を輸送するタンカーのように遠隔地に搬送することができれば、電力発電に必要な複雑な機器を使わずに、現地で単純なポンプ式システムを使うだけで発電できる。同校化学科のコタンダラマン・ラマヌジャム(Kothandaraman Ramanujam)博士のチームは、太陽光充電を使用した1 kWhおよび10 kWhのVRFBをデモとして製作し、300回以上の充電・放電サイクルを実現した(約3日間で1サイクル)。このVRFBは80~85%の発電効率の高電流密度で電力を提供する。
この研究は、インドの石油天然ガス公社(ONGC)およびハイエネルギー・バッテリーズ(High Energy Batteries)社がサポートして行われた。
現在、VRFBのスタックにはナフィオン(Nafion)と呼ばれるイオン電導膜が使われており、この素材がVRFBの製造コストの25%を占めている。このためチームは現在、ナフィオンに代わる低コストのセラミック・炭化水素をベースとした多孔膜の開発を進めている。また、レドックスフロー電池(RFB)の製造コストを抑えるため、バナジウムの代わりに鉛と有機リドックス素材を使った電池の開発も進めている。
さらに研究チームは、フロー電池の化学合成に自然界に豊富に存在する鉛、亜鉛、鉄、有機酸化還元活性材料を使う研究も進めている。現在、エネルギー貯蔵コストは発電コストを上回っているが、この新規化学合成により、エネルギー貯蔵コストを太陽光発電コストと同程度またはそれ以下に抑えられる。
ラマヌジャム教授は、「VRFBをエネルギー供給システムに適用することにより、風力や太陽光による電力を確実に、継続して供給し続けることができます。またオフィスビル用の大規模無停電電源(UPS)としても使用できます」とVRFBの用途を説明する。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部