2022年09月
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インプラント用ハイドロゲルを開発―糖尿病で損傷の網膜に薬剤投与が可能に インド工科大

インド工科大学ルールキー校(IIT-R)の研究チームが、損傷した網膜に薬剤を投与可能なインプラント用ハイドロゲルを開発した。科学誌 Nature India が7月28日に伝えた。本成果は学術誌 Materials Letters に掲載された。本研究成果により、糖尿病性網膜症で障害を受けた目の視力を維持したまま治療することが期待されている。

目薬は、目の前方の疾患には有効だが、奥の部分、特に網膜に影響を与える疾患を治療することは困難である。これを克服するため、マヤンク・ゴスワミ(Mayank Goswami)教授率いるIIT-Rの研究チームはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)およびキトサンのポリマーを使って、コンタクトレンズのインプラントに使用可能な軟質ハイドロゲル材料を作製した。

このインプラントは目の奥側まで薬剤を供給することができ、主に網膜に影響を及ぼす糖尿病の合併症である糖尿病性網膜症の症状を緩和するために使用できる可能性があると、研究チームは考えている。さらに、このインプラントが特定のヒト腎臓細胞に対して無毒であることを確認し、細胞増殖に適した足場や基質として機能することを示した。

キトサンベースのインプラントは治療には有用だが強度が低い。そしてHEMAベースのインプラントは、市販のコンタクトレンズの構造に酷似しており、それを活用したこのインプラントは可視光を通すため、通常の視力を維持したまま使用できることが示唆された。研究チームは、次の段階としてマウスを使った動物実験を行い、損傷した網膜を治すための薬剤を投与してこのインプラントの有効性を検証するとしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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