2022年09月
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口腔内の病原菌を死滅へー磁性ナノロボット開発 インド理科大学院

インド理科大学院(IISc)の研究者たちは、口腔内の病原菌を死滅させる磁性ナノロボットを開発した。磁場をかけることで歯髄組織に侵入した病原菌に薬剤を送達し、熱を発生させることで治療できる。科学誌 Nature India が伝えた。8月10日付。研究成果は学術誌 Advanced Healthcare Materials に掲載された。

口腔内の細菌には、歯の象牙質に到達し歯髄組織に侵入するものもある。こうした細菌が感染した症例では、根管治療で細菌を完全に除去することは難しいとされている。

そこでIIScのデバヤン・ダスグプタ(Debayan Dasgupta)教授とシャンムク・スリニヴァス・ペディ(Shanmukh Srinivas Peddi)教授らの研究グループは、二酸化ケイ素に鉄のナノ粒子を埋め込みらせん状の磁性ナノロボットを開発した。研究グループは、このナノロボットを脱イオン水に懸濁させた後、歯の模型の透明な中心管に注入して磁場をかけ、近赤外線画像技術によりその動きを追跡した。回転磁場によりナノボットは象牙質内の一定方向に誘導されるが、この技術出はナノボットを均一に分布させることができなかった。これに対し研究チームは、振動磁場によってナノボットに揺動運動を起こし、象牙質の長手方向にナノボットを移動させることで、均一に分布させることに成功した。

4万個の粒子についてシミュレーションを行ったところ、ナノボットは象牙細管という溝のネットワークの表面と相互作用し、病原性細菌が存在する深部まで到達することができることがわかった。また、治療後はナノボットに回転磁場をかけることで象牙質から除去し、ナノ粒子の蓄積や毒性の可能性を低減できることが明らかになった。さらに、研究チームは人間の歯に侵入する耐性菌の1つであるエンテロコッカス・フェカリスを使用して実験を行った。回転磁場を用いて、細菌に感染した歯のサンプルにナノボットを送り込み、振動磁場を15分間かけると熱が発生し、細菌を死滅させることができた。

主任研究員のアンバリッシュ・ゴッシュ(Ambarish Ghosh)氏は「このナノロボットは外科手術に役立つほか、歯の標的組織に薬剤を正確に送達するよう設計することができます」と話している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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