2022年09月
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有限要素(FE)モデルを使って電気可塑性の仕組みを解明 インド工科大学

インド工科大学マドラス校(IIT-M)の研究者グループは、有限要素(FE)モデルを使って電気可塑性(かそせい)の仕組みを解明した。8月16日付け発表。

電力を使って金属、非金属素材を変形する技術が昨今、注目を集めている。この変形は電気塑性効果と呼ばれる。電気塑性効果は速度依存成分(または熱成分)および速度非依存成分(または非熱的な成分)の2つの成分に起因し、電流密度印加時に瞬時に起こる応力低下や電流停止時の硬化回復、広範囲にわたる熱軟化が特徴。電気塑性効果は、電流が導体を通過する時に発生するジュール熱により引き起こされると考えられていたが、それだけでは電気塑性効果の仕組みの説明としては不十分であった。

今回、IIT-Mの研究者グループが、ABAQUSと呼ばれるFEモデル・ソフトウェアを使い、電気アシスト変形のモデル化を試みた。モデル化においては、2つの電流モード (連続電流とパルス電流) を使用した。その結果、電気塑性効果は速度依存成分および速度非依存成分の流動応力変化の重ね合わせとしてモデル化することが有効であることが分かった。また連続電流を使ったモデルのほうがパルス電流を使ったモデルよりシンプルだが、変形過程を通して連続電流を一定に保たなければならない。今回の研究では、電気アシスト変形のさまざまな特性を、実験データとあわせてシミュレーションすることに成功した。

電気塑性効果分野のエキスパートとして知られる韓国ソウル国立大学のヒュン・ナム・ハン(Heung Nam Han)教授は、「電気塑性効果分野では、1960年代からジュール熱による温度上昇を伴わない電流下で起こる材料の伸長が注目されていました。今回の革新的な研究の結果は、電流を使った多様な製造技術に応用でき、電気塑性効果のさらなる解明に貢献するでしょう」と研究結果を称えた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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