2022年09月
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発がん性物質を検知するAIモデル開発→メルファラン、サルファーマスタード等を予測 インド

インドの科学者チームが人間の発がん代謝物を検知する人工知能(AI)モデルを開発した。科学誌 nature india が8月16日に伝えた。研究成果は学術誌 Nature Chemical Biology に掲載された。

人間の体内に取り込まれた食べ物や薬剤、その他の化学物質は、体内で分解された時にさまざまな代謝物を生成する。代謝物の中には、人間の健康な細胞を発がん性細胞に変化させるものもある。しかし、こうした発がん性代謝物をスクリーニングする動物実験は高価で時間がかかるという問題があった。

今回、インド・ラプラズサ情報工科大学デリー校(IIIT-D) の研究者らが、より迅速で優れたスクリーニング・システムを開発し、Metabokillerと名付けた。このシステムは、酸化ストレス、増殖、ゲノム不安定性、および抗アポートシスを誘導する機能に基づいて人間の発がん性代謝物を分類する6つのモデル群で構成されている。

研究グループにはIIIT-Dに加え、インド科学産業研究委員会 (CSIR) ゲノム・総合生物学研究所およびインド工科大学ローパル校(IIT Ropar) の研究者が参加し、Metabokillerを使ってヒューマン・メタボローム・データベース (HMDB) に登録された21万7921の代謝物をスクリーニングした。

その結果、代謝物の約37.5%が発がん性を持つと予測され、そのうち38の代謝物は、既に発がん性物質として特定されていたものであった。発がん性と予測された代謝物にはメルファラン、サルファーマスタード、ジクロロエタン、クロラール、トリクロロエタンなどが含まれる。

この研究チームはまた、Metabokillerの効果を確認するため出芽酵母細胞および人間の肺上皮細胞を発がん性代謝物と予測される4-ニトロカテコールおよび3、4-ジヒドロキシフェニル酢酸に曝露した。その結果、いずれの化学物質でも細胞に悪性転換が観察され、モデルの有効性が示唆された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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