全インド医科大学(AIIMS)の研究者を含む国際研究グループは、人の角膜の形を変えることができる無細胞医療機器を開発したと発表した。これによって縫合不要の低侵襲手術で、患者の薄くなった角膜に機器を埋め込み、視力を回復できる。科学誌 nature india が8月22日に伝えた。研究成果は、科学誌 Nature Biotechnology に掲載された。
円錐角膜という疾患では、角膜の中心部分が徐々に薄くなり視力が低下する。既存の治療法では、ドナーから角膜を入手し、手術を行う必要があるが、視力はわずかしか回復しない。
そこで研究グループは、食品産業からの精製副産物である豚皮の医療用コラーゲンを用いて、細胞を使わない移植用医療機器を生物工学的に作製した。保存性、生体適合性、安定性をテストしたところ、この医療機器が人の角膜のように可視光を透過することを発見した。実際に、円錐角膜の患者20人のレーザーで切り取った角膜ポケットにこの機器を埋め込み、2年間の追跡調査を行った。結果、移植した機器による刺激や炎症、機器の脱離は起きず、手術前に失明していた14人の視力が回復した。
この医療機器は、人の角膜上皮細胞に対して毒性がない。さらに、特別な培地や管理手順を必要とせず、室温や冷蔵庫で保存することができる。無菌状態で作製できるため、人の組織に使用する際に必要な病原体検査も不要である。研究者らは、この研究により多くの患者の視力回復が実現できるとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部