インド工科大学デリー校(IIT-D)の研究者が10年分の衛星データから、インドにおける環境中の微粒子の増加から、妊娠可能年齢にある女性の貧血率が予測できたと科学誌 nature india が伝えた。9月7日付け。今後、大気の清浄化を行うことで貧血有病率を低下させることができると期待される。研究成果は学術誌 Nature Sustainability に掲載された。
これまでの研究から、先進国では、環境中の微粒子が炎症を誘発し鉄の吸収を阻害することで、貧血を引き起こす可能性があることがわかっている。
研究チームは10年分の衛星データを用いて、インド国内における黒色炭素、有機炭素、硫酸塩、土壌塵、海塩などの微粒子曝露、および貧血有病率を推定した。その結果、妊娠可能年齢にある女性の貧血率を再現することに成功した。さらに、インドの全地域における貧血率は53.1%であり、都市部では農村部に比べて若干少ないことがわかった。なお、2017年11月時点で、ニューデリーの汚染レベルが世界保健機関(WHO)の許容限界の約30倍に達している。
「インドではWHOが定めた許容限度をはるかに超える高濃度の微粒子に長期間さらされています。酸化ストレスによって炎症が誘発され、体内での鉄の輸送と吸収が損なわれ、ヘモグロビンの形成に利用できる鉄が減少し、貧血につながります。しかし、大気の清浄化を目指す戦略を実行することで、インドの186地区における貧血率を国家目標である35%以下に抑えることができるでしょう」と研究チームは話している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部