インド工科大学マドラス校(IIT-M)の機械工学科の研究チームが自然からヒントを得て水素貯蔵システムを設計した。9月6日付け発表。研究成果は、科学誌 International Journal of Hydrogen Energy に掲載された。
クリーンエネルギーとしての水素は非常に重要であるが、揮発性のガスであるため貯蔵が難しいという問題がある。従来の高圧ボンベや極低温冷凍機による気体・液体貯蔵に比べ、より少ないエネルギーで水素を貯蔵できる金属水素化物(MH)ベースの貯蔵システムが利用されている。
水素を吸収すると多くの熱が発生するため、MHから熱を移動させる必要がある。熱伝達デバイスが使用され、チューブとフィンを併用することで熱伝達を向上できることが分かっている。チューブと一緒に使用するフィンの最適な形状や厚みについても、さまざまな研究が行われている。
今回、IIT-Mの研究チームは初めてカエデの葉脈から着想を得たフィンを設計した。この葉脈型の設計に基づく提案モデルは、良好な吸収・熱伝達特性を有していた。
IITティルパティ校機械工学科のE・アニル・クマール(E. Anil Kumar)博士は、次のように話している。
「インド政府は、グリーン水素ミッションを発表しています。このミッションを実現するための大きな課題は、再生可能エネルギーから製造されたグリーン水素の取り扱い、貯蔵、流通です。安全で費用対効果の高い水素貯蔵装置の開発は時代の要請です。MH反応器の熱・物質移動解析に関する研究はすでに多く行われていますが、今回提案されたバイオインスパイアードデザインは、他のモデルと比較して高い性能が証明されており、斬新なものだと思います。この研究は、安全で持ち運びができ、費用対効果の高い水素貯蔵装置を設計するために、他の研究者が自然にヒントを得た設計を探求する動機付けにもなっています」
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部