インド科学産業研究委員会の インド化学生物学研究所(CSIR-IICB)の研究チームは、脳内の神経細胞を破壊するアミロイドβペプチド(beta-amyloid peptides)の凝集体に選択的に結合する蛍光プローブ(light-emitting probe)を開発した。科学誌 nature india が9月13日に伝えた。研究成果は学術誌 ACS Chemical Neuroscience に掲載された。
アミロイドβペプチドは、脳内で作られるタンパク質の一種で、その凝集体はアルツハイマー病に関わっていると考えられている。開発された蛍光プローブは、アミロイドβペプチドの凝集体に結合すると赤色を発光するため、アルツハイマー病を検出するための技術に利用できると研究チームは説明する。
現在使用されている蛍光プローブは、脳内のアミロイドβペプチドに選択的に結合しないことから、誤検出を招いている。研究チームは、より良い検出薬を求めて、RM-24からRM-28と名付けた5つの蛍光プローブを合成し、毒性の高いアミロイドβ42の検出効率を調べるため、分子モデリングによる解析と実験を行った。
その結果、RM-27とRM-28の蛍光プローブがペプチド凝集体に結合し、発光強度に有意な変化が認められた。特に、RM-28は無毒でありながら大きな発光強度を持ち、アミロイドβ42にのみ結合した。また、ヒトの血漿中で最大1時間安定して留まることが確認された。ちなみに、RM-27とRM-28以外の蛍光プローブは発光強度が弱いか、発光しなかった。
アルツハイマー病に罹患したマウスの脳内では、記憶をつかさどる海馬と大脳皮質において、RM-28と結合したアミロイドβ凝集体が検出された。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部