インド科学技術省はスタートアップへのR&D支援を加速している。
1) インド科学技術省は、DST(科学技術庁)傘下の技術開発委員会が、マハラシュトラ州のスタートアップであるMulti Nano Sense Technologies Private Limitedによる水素センサーの国産化を支援するための了解覚書(MoU)に調印したことを明らかにした。8月19日付け。これは、同国のモディ首相が推進する国家水素政策(National Hydrogen Mission)ビジョンの一環で、2030 年までに500 万トンのグリーン水素生産と関連する再生可能エネルギー容量の開発を可能とするものだ。
近年の急激なエネルギー需要の増加により代替燃料が必要であり、「水素」は化石燃料を代替する将来の有望な燃料である。再生可能エネルギーからの電力を使用して「グリーン水素燃料」を生産することは、国家のエネルギー安全保障に向けた主要な要件の1つとなる。その最初のステップとして、水素漏れを検出し、システムの安全性とセキュリティを強化するための高度な漏れ検出センサーの国産技術での開発製造のために、このスタートアップを支援する。
同社は新時代のアプリケーション向けに独自の最先端水素分析センサーを開発している。また、特許取得済みの水素ガスセンサーおよびアナライザー(分析装置)は、コアセンサーをベースにした水素の漏れ検出・分析のためのユニバーサル小型コアセンサーの設計にも関連している。現在、すべてのコアセンサーは、中国、米国、英国、日本、ドイツからの輸入に依存しており、国産技術の開発が喫緊の課題となっている。
このセンサーの主な特徴は、他の可燃性ガスや還元性ガスからの相互干渉に影響されず、空気中でも不活性、あるいは真空の状態でも機能し、PPMのレンジから、100%の純粋な水素までの分析が可能となる。また、最大100%の純粋水素の検出、3秒以内の即時検出、さらに、コアセンサー消費電力は低く、ポータブル検出器では1回の充電で最大36時間の連続動作が可能、かつ、非腐食性において5年の長寿命などの特徴を持っている。
(写真はPIBリリースより)
2) インド科学技術省は、インド工科大学カンプール校(IIT Kanpur)でスマートな水管理技術の開発のため設立されたスタートアップのKritsnam Technologiesと、スマートフローメーター(Dhaara Smart Flowmeter)の生産と商業化支援のためにMoUを締結したと発表した。8 月17 日付け。この技術は、将来、全国の地下水開発を効果的に監視および制御するためのゲームチェンジャーになる可能性があると言われており、3,290万ルピー(約5,900万円)の支援が実施される。
この技術は、飲料水の供給、地下水抽出、工業用水の使用、精密灌漑などのアプリケーションのためにリアルタイムで水の分布を追跡するもので、2つのビーム超音波流量計を使用したオンライン監視用の統合システム。このデバイスは、センサーで収集したデータをデバイスに保存し、オンラインのクラウドサーバーに送信されて分析され、ダッシュボードに表示されるもので、流量測定と水管理のためのハードウェアとソフトウェアの組み合わせで構成されている。このシステムは、大量の水消費者が水使用量のパターンや非効率使用のポイントを理解して計画的に利用することで浪費削減を目指すことが可能となる。
同フローメーターはバッテリー駆動で外部電源を必要とせず、ハードウェアはインドで特許を取得したIoT (モノのインターネット)通信回路に基づいており、ISOおよび中央地下水局の基準にも準拠している。水使用量データは、4G/2G 経由のテレメトリーを通じてオンラインで自動的に記録されるもので、組み込みのテレメトリーとバッテリー駆動の機能により、ユーザーは、どこにいても (電源が切れている場合でも) 水の消費量を簡単に監視できる。開発中の同製品は、当初、ホテル、病院、ショッピング モール、IT パーク、学校、大学、産業ユーザー (食品、包装された飲料水、医薬品、紙とパルプなど) などの商用ユーザーを対象としている。
(写真はPIBリリースより)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部