2022年10月
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アルツハイマー病の発症、脳内鉄分の異常蓄積が関係 インド

インド国立脳研究センターの研究チームは、MRI(磁気共鳴画像装置)を用いた研究により、脳の特定部位における抗酸化物質グルタチオンの枯渇と鉄の増加が、軽度認知障害(MCI)からアルツハイマー病へ移行させることを明らかにした。科学誌 Nature India が9月27日に伝えた。本成果は科学誌 Brain Communications に掲載された。

通常、体内の鉄は過剰にならないような調節が行われている。さらに、成人の場合、体内の鉄過剰の影響が脳内に及ぶことは少ない。グルタチオンは遊離鉄と結合することで、脳内に異常蓄積するのを防ぐ効果を持つことが知られている。

インド国立脳研究センターのプラバット・マンダル (Pravat Mandal)氏が率いる神経科学者チームは、健常者、MClおよびアルツハイマー病患者を含む72人の脳を対象に、先端的なMRI技術である定量的磁化率マッピングを実施した。その結果、MClとアルツハイマー病患者の脳内グルタチオン濃度の有意な低下とアルツハイマー病患者の左海馬における鉄蓄積が観察された。左海馬に異常蓄積した鉄がフリーラジカルや活性酸素を発生させ、酸化ストレスを与えることが、アルツハイマー病で見られる神経細胞死を引き起こすと考えられている。この左海馬のグルタチオンと鉄のレベルのモニタリングにより、80%以上の精度でアルツハイマー病の診断も可能なことが分かった。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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