インド工科大学ルールキー校(IIT-R)の研究チームは、唾液の中の特定のタンパク質とその構成ペプチドを用いて、予後不良で知られるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の早期患者と健常者を区別することに成功した。科学誌 nature india が10月13日に伝えた。研究成果は学術誌 Journal of Proteomics に掲載された。
TNBCは治療の難しい乳がんの一つである。研究を行ったスリニヴァス・キラン・アンバティプディ(Srinivas Kiran Ambatipudi)氏らによると、唾液による乳がん検査は侵襲的生検や放射線学的評価などの既存の方法よりも優れているという。
研究者らは、TNBCの患者20人と健常者20人から唾液サンプルを採取し、唾液の中の39のタンパク質を同定した。その結果、TNBC患者においては9のタンパク質で増加が見られ、30のタンパク質で減少がみられた。また研究チームは、TNBCの患者と健常者との間において、リポカリン1(LCN1)、顎下腺アンドロゲン調節タンパク質3B(SMR3B)およびプラスチン2(LCP1)の3つの唾液タンパク質の差次的発現を見出した。これらのタンパク質は、腫瘍の成長と浸潤を助ける経路に関与し、転移を引き起こす。
研究者らはこれら3つのタンパク質から、それぞれ2つのペプチドを単離した。そして、5つのペプチドを組み合わせることによって、より高い精度でTNBCを診断できることを確認した。このペプチドマーカーの有効性が多くの患者で検証されれば、TNBC診断検査の開発に応用できると期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部