2022年11月
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ヤクやアイベックスがヒマラヤなどで土壌炭素の長期的安定性に重要な役割 インド

インド理科大学院(IISc)の生態科学センター(CES)とディベチャ気候変動センター(DCCC)の研究者らが、ヤクやアイベックスなどの大型哺乳類草食動物がヒマラヤのスピティ地域などで、生態系の土壌炭素プールの安定化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。10月18日付け発表。

生態系から草食動物による植食を実験的に取り除くと、地球の炭素循環に意図しない悪影響を及ぼす可能性があることが示唆された。研究成果は学術誌 Proceedings of the National Academy of Sciences に掲載された。

土壌は、全ての植物と大気を合わせたよりも多くの炭素を含んでいるため、その持続性を確保することが重要である。植物や動物が死ぬと、有機物が微生物によって分解され、二酸化炭素(CO2)として大気中に放出されるまでの長い間、土壌中に残ることになる。論文の責任著者であるサマンタ・バグチ(Sumanta Bagchi)准教授は、「土壌プールは、炭素を捕捉するための信頼できる吸収源です」と説明する。土壌中の炭素濃度を安定させることは、気候変動の影響を相殺する上で重要なことである。

バグチ准教授は、博士課程中の2005年、大型草食動物がヒマラヤの生態系に与える影響についての研究を開始した。ヒマーチャル・プラデーシュ州政府、地元当局、スピティのキッバー村の人々の支援を得て、動物を排除した区画と大型草食動物がいる区画を設置した。研究チームはその後10年間、土壌サンプルを採取し、その化学組成を分析し、各区画の炭素と窒素のレベルを毎年追跡して比較した。

その結果、動物がいない区画では、土壌の炭素が毎年30〜40%変動していることが判明した。このような変動の根底にある重要な要因は、窒素であった。土壌の状態によって、窒素は炭素プールを安定させることも不安定にすることもできる。しかし、草食動物の植食によって、バランスが前者に傾くことが明らかになった。

従来の多くの研究は、「炭素と窒素のレベルを長い時間間隔で測定し、そのため炭素の蓄積や損失はゆっくりと進行するものと考えていました」と、DCCCの博士課程に在籍し、論文の筆頭著者であるディリップ・GT・ナイドゥ(Dilip GT Naidu)氏は指摘する。これに対し、彼らがデータに見いだした年次変動は、まったく異なる状況を描き出している、と言う。そして、大型草食動物による植食生態系は地球上の地表の約40%を占めているため、土壌の炭素を安定させる草食動物を保護することは、気候変動を緩和するための重要事項であると研究者らは指摘する。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部