インド科学技術省は、インドの研究者が、より高次元系におけるエンタングルメントの量を定量化するためのより簡単な方法を発見したことを10月10日付けで発表した。
2022年にノーベル物理学賞を受賞した量子エンタングルメント(複数の粒子が離れていても1つのユニットのように振る舞う現象)の実験は、インドの科学者による大きな成果であった。もつれ状態は量子力学において重要な状態であり、古典的なシステムでは不可能な量子通信、量子計算、および情報処理タスクのリソースとして使用できるものだ。また、高次元システム (2以上の次元) は、量子コンピューティングと量子通信の両方で利点があることが証明されている。したがって、エンタングルメントの定量化の研究とともに、高次元のエンタングル状態を実験的に実現することは非常に重要なことである。
この研究は、量子テレポーテーション (ある場所にある送信者から離れた場所にある受信者に量子情報を転送する技術) などの技術的アプリケーションのもつれ状態の有効性のより適切な評価を可能とするもので、プロセスの成功と精度は、エンタングルメントの量と他の量子通信プロトコルに依存する。
これまで、エンタングルメントの定量化に向けた関連研究は、主にエンタングルメント測定(メジャー)の境界 (最大/最小) を示すことに焦点を当てており、量子状態を特徴付ける既存の方法は、量子状態トモグラフィー (Quantum State Tomography: QST) で、エンタングルメントを定量化するために使用されている。一方、システム規模が大きくなるにつれて、より多くのパラメータを決定する必要があり、任意の次元のもつれ状態のもつれを経験的に推定することはできなかった。
インド科学技術庁(DST)傘下の独立機関であるラマン研究所 (RRI) は、カナダの量子コンピューティング研究所(Institute for Quantum Computing)と協力して、統計的相関測定法と既知のエンタングルメント測定の間の分析関係を定式化した。わずか2セットの測定値を使用することで、一対の3次元フォトニック・キュートリット(qutrit:3つの直交する量子状態の重ね合わせとして存在する量子情報の単位)のエンタングルメント量を実験的に定量化した。
この研究成果は、ジャーナル Quantum Science and Technology に掲載された。QSTに比べ、より実験に適して扱いやすい代替手段を提供することができる。2つの異なるエンタングルメント測定法によって定量化された最大 (100%)エンタングル状態からの、特定の状態のエンタングルメントの偏差のパーセンテージを測定するもので、高次元の量子状態でのエンタングルメントの異なる尺度間のこの非同等性を初めて実験的に明らかにした。従い、エンタングルメントを定量化だけでなく、特定の応用に対するエンタングルメント状態の有効性のより適切な評価の可能性につながるものだ。
(写真と図はPIBリリースより)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部