インド工科大学マドラス校(IIT-M)は、同校と米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(JPL)の研究者らが、国際宇宙ステーション(ISS)内の微生物間の相互作用について新たな知見を得たと発表した。10月21日付け。本研究は、宇宙ステーションの消毒戦略を考案し、微生物が宇宙飛行士の健康に及ぼす潜在的な影響を最小限に抑えるのに役立つと考えられている。研究成果は学術誌 Microbiome に掲載された。
宇宙飛行中の宇宙飛行士は、免疫力が低下している可能性があり、地上の医療施設へのアクセスも限られている。したがって、宇宙ステーションに生息する微生物を研究することは、短期および長期の宇宙旅行が宇宙飛行士の健康に及ぼすリスクを理解する上で重要になる。
本研究は、ISSの表面でクラブシエラ・ニューモニエという菌が優勢であることを以前に観察したことが動機となっている。肺炎やその他の院内感染の原因となることが知られているこの病原菌が、周辺の他の微生物の増殖にどのような影響を与えるのか、またそれがどのような意味を持つのか、調査を行った。
研究者らは、ISSの7カ所から3回の宇宙飛行で採取された微生物サンプルデータを分析した。その結果、クラブシエラ・ニューモニエは、同じくISSに存在するさまざまな他の微生物、特にパントエア属の細菌にとって有益であることが分かった。反対に、アスペルギルス属の菌の増殖には、その存在が妨げになっていることが分かった。この結果は実験室でも再現された。
JPLの上級研究員であるカスツリ・ヴェンカテスワラン(Kasthuri Venkateswaran)博士は、「密閉され閉鎖された宇宙ステーションに微生物が持ち込まれるルートの1つは、乗組員を通してです。しかし、宇宙ステーションの環境は地球上とは異なります。微生物同士の相互作用も、このような宇宙での悪環境の影響を受けるため、今回のような研究が必要なのです。宇宙での微生物に関する知識が増えれば、長期の宇宙旅行における適切な安全対策を考案することができます」と話している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部