発展途上国はいま、世界に追いつこうと急いでいる。インドも例外ではない。インドでは高速道路、都市鉄道システム、空港を建設する大きなプロジェクトが数多く進められている。
これらのうち、「同種で初めて」のプロジェクトの多くは「先陣」プロジェクトとも呼ばれ、通常は外国から技術と知識が移転するという特徴を持つ。このため、外国のコンサルタント、請負業者、その他プロジェクトに貢献する企業が関わってくる。
1つのメガプロジェクトに異なる見解と背景を持つ多くの文化が関わり、プロジェクト管理の大きな課題を作り、プロジェクトの衝突や遅延につながることが少なくない。そして遅延はプロジェクトのエンドユーザーである国民に影響を与える。国民は質のよい水の供給、交通、エネルギーに関するサービスなどを予定通りに利用することができなくなる。
インド工科大学マドラス校(IIT-M)土木工学科のアシュウィン・マハリンガム (Ashwin Mahalingam) 教授は、インドのインフラ・プロジェクトが初期段階で直面した課題と、異なる見解に折り合いをつけプロジェクトを円滑に管理するプロセスの方法について詳しく調べた。この研究では、制度組織理論を使用した。
この研究では、デリーメトロの一部を作った、インドの2つのメガプロジェクトのデータを調査した。デリーメトロはインドで最初の近代的な地下鉄システムであり、他のさまざまな都市の同様のプロジェクトのお手本になると期待されていた。
クライアント側組織は公共部門であるインド鉄道の職員から構成されており、プロジェクトの進行を管理し監視するために設立された。また、民間部門のコンサルティング組織であり、いくつかの外国企業から構成される国際ジョイントベンチャー (IJV) も活用した。契約は、民間部門である2つのIJVが受注した。1つはスウェーデン、日本、インドの3つの請負業者によるIJVであり、もう1つはドイツ、韓国、日本、インドの4つの請負業者によるIJVである。
主な成果として、プロジェクトには2つの衝突があったことが分かった。プロセス理論の衝突と階層理論の衝突である。前者の場合、プロジェクト管理に対してインドのクライアントは「ルールに基づく」アプローチを好む傾向があったのに対し、外国の請負業者は「結果に基づく」アプローチに従っていた。例えば、クライアントは鉄筋柱の間隔などの設計仕様を厳しく守るよう求め、支払いは滞った。しかし、現実には仕様との正確な整合性を確認することは難しく、支払いが差し控えられると作業は遅れがちになり、衝突がよく発生した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部