インド科学技術庁 (DST)傘下の独立研究機関であるラマン調査研究所 (Raman Research Institute: RRI)は、ゲル、ミクロゲル、膜、センサー、バイオセンサー、および薄膜で使用される PNIPAM (ポリ (N-イソプロピルアクリルアミド):poly (N-isopropylacrylamide))と呼ばれる温度応答性ポリマーのコロイド懸濁液(けんだくえき)が大きな変形を受けると、その流動挙動に興味深い変化があることを発見した。12月5日付け発表。
RRIでは、これらのヒドロゲルのダイナミクスを非常に広い範囲の長さと時間スケールで調査し、密集した PNIPAM 懸濁液でせん断力の存在下で材料の誘電応答を測定した (レオ誘電研究)。そして、大きな振動応力下での密集した PNIPAM懸濁液の流動挙動または動的特性が、長さスケールが変わると変化することを発見したものだ。レオ誘電体研究とは、せん断による構造変化が電荷分布と分極変動をどのように直接変化させるかをナノスケールからマクロスケールまで判断するために使われる。
PNIPAMヒドロゲルの温度依存の相挙動は広く研究されているが、外部から加えられた大きなひずみの適用によるシステムの双極子変動 (誘電感受率の変化) は調査されていない。そこで、双極子ゆらぎは、原子/分子レベルで PNIPAM 粒子のダイナミクスを研究するために役に立つと考えられる。
大きな振動変形が適用されると、双極子はナノメートルに近い小さな長さスケールで詰まるが(ジャミング)、同じ懸濁液はバルクフローで加速する。これは、フロー電池やフローキャパシタなどの電気エネルギー貯蔵デバイスでのコロイドヒドロゲルの使用に広範囲にわたる影響を与える可能性がある。
その熱応答性のために、柔らかいポリ (N-イソプロピルアクリルアミド) (PNIPAM) 粒子の懸濁液は、スマートハイドロゲル材料として有用であり、薄膜技術のバイオセンサーとして、また生物医学分野で、制御および自己調節された薬物送達のために広く使用されている。さらに、水性PNIPAM懸濁液は、大きな外部せん断応力とひずみを受けたときに特徴的な流動特性を示すため、高密度コロイド懸濁液の速度論的に停止した状態を研究するためのモデルシステムである。
RRIの研究者は、流動挙動が長さスケールに依存すること (せん断減粘挙動) は、せん断によって引き起こされて膨張したPNIPAM粒子の壊れやすいクラスターの破裂に起因すると考えた。
研究者は、「せん断下で絡み合ったPNIPAMチェーンの動きが制限されると、誘電緩和時間が長くなるが、膨潤したPNIPAM微細構造のせん断によって引き起こされる破壊は、バルクでの応力緩和を加速する」とその違いを説明している。
今回の新しい発見は、材料設計と処理の観点から、スマートPNIPAMヒドロゲルを将来有望な材料にすることが可能で、また、長さスケールに依存するジャミング (個々のエンティティに課せられる動力学的制約による高密度懸濁液中のPNIPAM粒子のダイナミクスの減速) や、密なガラス形成懸濁液のジャミングを解除するダイナミクスを明らかにするための研究にも有効であるという。
(上図はRRIリリースより)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部