2023年01月
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【AsianScientist】低コストの医療機器を発明、セロトニンの影響研究―6氏にインドの科学賞

インドのSTEM分野と社会への貢献が認められ、6人の研究者が2022年インフォシス科学賞(Infosys Science Prize)を受賞した。名誉ある同賞には、エンジニアリング・コンピューターサイエンス、人文科学、ライフサイエンス、数理科学、物理科学、社会科学の6つの部門が設けられている。

エンジニアリングおよびコンピュータ サイエンス部門の賞は、インド工科大学カラグプル校のスマン・チャクラボルティ(Suman Chakraborty)氏に授与された。同氏は、マイクロおよびナノスケールでの流体力学、界面現象および電気機械技術の相互作用に関する先駆的な研究を行った。その理解を通じて、同氏はインドのリソースが限られた環境で病気を治療、予防、診断するための低コストの医療機器を発明した。

ムンバイにある基礎研究所(Institute of Fundamental Research)のVidita Vaidya氏は、不安やうつ病などの気分障害の根底にある脳のメカニズムに関する発見により、ライフサイエンス賞を受賞した。彼女は、神経伝達物質であるセロトニンが、幼少期のストレスや心理的外傷を受けた後の脳のエネルギー調節と行動にどのように影響するかを研究している。

バンガロールにあるインド理科大学院(IISc)のマヘシュ・カカデ(Mahesh Kakde)氏は、代数的整数論への多大な貢献により、数学賞を受賞した。非可換岩澤理論の主な予想、Gross-Stark予想、Brumer-Stark予想に関する彼の徹底的な研究は、整数論の核心にある未解決の予想を解決するものである。

物理科学賞は、プネーにあるタタ基礎研究所(Tata Institute of Fundamental Research)の国立電波天体物理学センター(National Centre for Radio Astrophysics)の教授である ニッシム・カネカ(Nissim Kanekar)氏が受賞した。彼は星が最大速度で形成される「最盛期」中の銀河を観測して、微細構造定数と電子対陽子質量比の考えられる永年変化にロバストな制限を設けた。

社会科学部門の賞は、経済学教授で米国エール大学経済成長センター長のロヒニ・パンディ(Rohini Pande)氏が受賞した。彼女は、ガバナンスと説明責任、女性の社会的地位の向上、貧しい人々の生活における信用の役割、環境に関する優れた研究を行ってきた。インドなどの新興国では、彼女の研究が政策設計にプラスの影響を与える可能性がある。

最後に、ベンガルールにあるインド国立法科大学のスディル・クリシュナスワミー(Sudhir Krishnaswamy) 氏は、インド憲法に関する洞察力に富んだ理解が評価され、人文科学部門で受賞した。

同賞はインフォシス科学財団(Infosys Science Foundation)が授与している。同財団のクリス・ゴパラクリシュナン(Kris Gopalakrishnan)理事長は、「受賞者らの研究は人類が直面している実存的危機(気候変動の影響、診断とヘルスケアへのアクセス、メンタルヘルスの課題、基本的人権の充足)の解決策を見つけるための基盤となるであろう」と述べた。

(2023年01月24日公開)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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