インド工科大学マドラス校(IIT-M)は1月5日、インドのチェンナイでは急速な都市化に伴う、建物の建設とその運用だけで2040年までに2億3190万トンの二酸化炭素(CO2)を排出する可能性があるとの予測を発表した。
IIT-M土木工学科のアシュウィン・マハリンガム(Ashwin Mahalingam)教授とIIT-Mの卒業生であるポークラジ・ナヤック(Pokhraj Nayak)氏は、3つのフェーズに分けて研究を行った。第1フェーズでは、世界的な環境NPOであるネイチャー・コンサーバンシー (The Nature Conservancy) が開発した地理空間土地モデルを使用したシミュレーションにより、過去の傾向と将来の制約を考慮した2040年のチェンナイの未来地図を作成した。このシミュレーションでは、都市部の建物が増加し、水辺や湿地が減少することが示された。第2フェーズでは建設活動のライフサイクル分析により、建物の解体、資材の運搬も含む建設、運用に排出されるCO2の総量を試算した。
その結果、2040年までに累積で2億3100万トン のCO2が排出されることが判明した。さらに第3フェーズではCO2の排出量削減についての検討も行った。研究チームは、低炭素型セメントへの置き換え、解体廃材の再利用、建物運用時のエネルギー源として再生可能エネルギーの利用の3つの対策を提案した。これらの中で最も効果があるのはエネルギー源の代替で、全体の50%を再生可能エネルギーでまかなうことができれば、CO2排出量を累積で1億1500万トン削減できると試算している。
マハリンガム教授は「CO2排出量の削減目標を達成するためには、未来において通常運用した場合の排出量をベンチマークとして逆算していく必要がある。本研究は、この問題に対して定量的に取り組む第一歩となる」と研究の意義を語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部