2023年02月
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巨大メートル波電波望遠鏡で超遠方銀河からの電波信号検出に成功 インド

インド理科大学院(IISc)は1月16日、同大学の天文学者とカナダのマギル大学の天文学者が、プネにある巨大メートル波電波望遠鏡(GMRT)を用いて、ルックバックタイム(信号が発信されてから検出されるまでの経過時間)で88億年の位置にある非常に遠い銀河の原子状水素由来の電波信号検出に成功したことを発表した。研究成果は学術誌 Monthly Notices of the Royal Astronomical Society に掲載された。

原子状水素は、銀河の中で星をつくるために必要な基本となるエネルギーとして知られている。銀河の周囲から降り注ぐ高温の電離ガスは冷やされて原子状水素になり、さらにそれが水素分子へと変化して星の形成につながる。銀河の宇宙論的な進化を理解するために、このような中性ガスの変遷をたどることが重要だと考えられている。

原子状水素はGMRTで検出可能な21センチメートルの波長の電波を発する。この電波信号は非常に微弱なため、これまで検出できた最も遠方の銀河はルックバックタイムで41億年の位置にあるものであった。

今回、マギル大学の物理学科およびトロティエ宇宙研究所のアルナブ・チャクラボルティー(Arnab Chakraborty)博士研究員と、IISc物理学科のニルパム・ロイ(Nirupam Roy)准教授は、GMRTのデータを用いて、ルックバックタイムで88億年の位置にある銀河の原子状水素から発せられた電波の検出に成功した。検出には観測対象と観測者の間にある巨大天体の存在により光が曲げられ信号が拡大される重力レンズ現象を利用している。また、今回検出した信号は、発信源が非常に遠方にあるため、22センチメートルの波長が48センチメートルの波長まで赤方偏移していた。

GMRTを運用するインド国立電波天体物理学センター(NCRA)のヤシュワント・グプタ(Yashwant Gupta)センター長は「遠方宇宙の原子状水素検出はGMRTの重要な目標の1つだった。この新しく画期的な成果をうれしく思う」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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