全インド医科大学(AllMS) パトナ校の研究者らは、新しい唾液腺であると報告された喉上部の部位が、唾液酵素を分泌せず、臓器としての特徴も持たないことから、唾液腺ではなく呼吸器官の一部であると発表した。科学誌 nature india が1月12日に報告し、研究成果は学術誌 Journal of anatomy に掲載された。
最近の研究で、喉上部の両側にある粘膜下腺の密な集まりが新しい唾液腺であるとされていた。該当部位に対して、AllMSパトナ校の解剖学者であるアシュトシュ・クマール(Ashutosh Kumar) 氏が率いる研究者らは、遺体の解剖による生化学的分析を行った。アミラーゼ酵素など唾液に特異的なマーカーや、唾液腺や気道の組織特異的なマーカーの探索を行ったが、アミラーゼの痕跡を見つけることはできなかった。また、該当部位は解剖学的には気道の一部である耳管の末端に位置し、この位置から粘液が口腔内に到達し、唾液に寄与する可能性は極めて低いという。さらに、研究者らによると、この粘膜下腺の集まりは臓器としての特徴である独立した血液や神経、リンパの流れもないとのことだ。
クマール氏は「新しい唾液腺であるとされた部位は、形態的、機能的に見ても気道の粘液腺と類似している。また唾液に含まれる必須酵素であるアミラーゼを分泌しないことからも、唾液腺とは異なることが強く示唆される」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部