インドの科学産業研究庁 (DSIR)、科学技術省、政府、科学産業研究評議会(CSIR) は共同で「国際的な技術移転における国境を越えたイノベーション、加速および課題」というテーマの国際知識共有ワークショップを開催した。2022年11月14、15の両日に開かれた同ワークショップを振り返る。
DSIR長官で、科学産業研究評議会 (CSIR) の会長である N.カライセルビ (N. Kalaiselvi) 博士がオンラインでワークショップの開会を宣言した。カライセルビ博士はこの中で、最終的に社会で使用される技術を開発するのがよいと強調した。
ワークショップの目的は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のうち、SDGs2(飢餓をゼロに)、SDGs7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)、SDGs9(産業と技術革新の基盤を作ろう)の目標達成の中で存在する課題を特定することであった。
「気候変動に強い農業と畜産を作る新たな技術でSDGs2を支える」をテーマとするこのセッションではCSIR-ISTADの首席科学者であるアナンド・モヒット (Anand Mohit) 博士が司会を務め、モノのインターネット(IoT)、ロボット工学、ドローンなどの新興技術を統合して生産的農業と畜産を目的としてのエネルギー回復力のある保全、選択性を高めるバイオテクノロジー、収量の改善、耐病性、精密農業、精密肥料の供給、イノベーションと政策の視点が議論された。特に、世界的視点とインドの視点から見たスマートで気候変動に強い農業、生産的農業のための作物育種技術、精密農業、精密肥料の供給、畜産、イノベーションについて建設的な議論が行われた。
「SDGs7を支えるエネルギーに使用するグリーン技術と低炭素新興技術」をテーマとするセッションでは、材料研究とイノベーション、生産技術、パワーエレクトロニクス、代替エネルギー(太陽光、洋上、風力など)のエネルギー貯蔵・管理、グリーン水素、カーボンマイナス技術、海洋バイオマス、バイオ燃料、5Gスマートグリッド、気候保護、持続可能性などが話し合われた。
その他、以下についても議論が行われた。
「SDGs9を支えるイノベーション、技術躍進、商業化におけるプロセスと主な制約」のセッションでは、各国の技術策定と採用サイクルの加速に関する機会、課題、およびガイダンスについて話し合いが行われた。インド、ドイツ、英国におけるイノベーションの状況、機会、および課題に関するさまざまなトピックが討論された。
インド政府首席科学顧問室科学局のパリンダー・マイニ (Parvinder Maini) 局長は、「イノベーションはリスクが高く不首尾に終わることが多いのだが、生存、競争力、市場支配力を高めるために不可欠だ」と力強く語った。そのうえで同局長はインドの政策の概要と重点を置くべきいくつかの点について説明した。それらは産業界からの研究開発費を増やす必要性、R&Sへの外国直接投資(FDI)、研究開発の輸出の増加、中央公的企業による研究開発、研究開発への支出に関する企業の社会的責任のガイドラインである。これらは技術移転と新興企業環境を推し進めるために必要であるとした。
この国際ワークショップは、イノベーターの能力を強化し、経験と優れた実践の相互学習を通じてインドと加盟国のイノベーター同士で地域協力を推し進め、国境を越えた技術移転の協力の機会と戦略の可能性を特定することを想定していた。アジア太平洋地域の技術に関するイノベーション、移転、普及についての課題、メカニズム、優れた実践の知識と意識を高めた。技術が国境を越えて移転し、普及することを目的として地域協力を強化する革新的な戦略と方法を探った。ワークショップのパネリストらは、イノベーションと技術移転のための地域協力を強化するにあたり主な課題への対処について提言を行った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部