インド物理学研究所のK・ドゥルガ・プラサド(K. Durga Prasad)氏が率いる研究チームは、月全域の表面温度と地下温度を把握するために市販のソフトウェアツールを使ったモデルを開発した。科学誌 nature india が1月23日に報告した。研究成果は学術誌 Earth and Space Science に掲載された。
これまで月の温度分布に関する研究は、アポロ計画による熱流量観測実験 など、月面赤道付近の熱的挙動に関する分析が行われてきた。一方で、今回開発したモデルは、月全体の表面温度と地下温度の理解に役立つものだ。
このモデルから得られた結果は、月の環境を模した10センチメートルの土柱内の熱分布の測定値と、アポロ計画からのデータで検証されており、数センチメートルから数キロメートルまでの横方向の熱伝導について3次元的に追跡できるという新しい特徴を持っている。さらに研究チームは、月表面最上部の軟らかい層が内部への熱伝導を強く阻害していることも発見した。
今回開発したモデルは、将来月で行われる物理学実験において熱流探査機を設置する深さの決定に利用できる。また、極域の水氷の位置の特定や、インドの月探査計画チャンドラヤーン3号、その他の宇宙船に搭載される機器により得られる熱データの解釈にも役立つものと考えられている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部