2023年03月
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火星近くの孤立波を特定、惑星イオン損失の謎解明へ インド

インド科学技術省は、インド地磁気研究所 (Indian Institute of Geomagnetism: IIG) が、高解像度の技術を利用して火星磁気圏の孤立波(Solitary Waves)を初めて特定したことを発表した。1月16日付け。

IIGの研究チームは、米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「MAVEN(メイブン)」 (※1) に搭載されたラングミュアプローブ(Langmuir Probe) (※2) と電磁波測定装置(Wave Instrument)によって記録された電場データにより、火星の磁気圏に孤立波、あるいは明確な電場変動が存在するという最初の証拠を発見した。火星の磁気圏は弱いが非常に動的であり、太陽風と火星の大気との直接的な相互作用によって形成される。また、これらの波の研究は、波と粒子の相互作用を通じて粒子の励起、プラズマ損失や輸送などを直接制御するために非常に重要なものと考えられている。

地球は巨大な磁石であり、その磁場は太陽風として太陽から絶え間なく放出される高速の荷電粒子から人類を保護している。一方、火星には固有の磁場が存在しないので、高速の太陽風が、障害物のようになり、火星の大気と直接相互作用する。よって、火星のように弱くて薄い磁気圏でも、孤立波が頻繁に発生していることが予想されていた。しかし、これまでの火星への探査ミッションでは、火星の磁気圏における孤立波の存在は報告されたことはなかった。

孤立波は、一定の振幅位相関係に従う明確な電界変動 (バイポーラまたはモノポーラ) である。それらの形状とサイズは、伝播中にあまり影響を受けない。また、これらのパルスの大きさと持続時間は、それぞれ 1~25ミリボルト/メートルと 0.2~1.7 ミリ秒であることが分かっている。これらのパルスは、火星周辺の高度1000~3500 km の夜明けと午後から夕暮れの領域で主に見られるものだが、夜明けと夕暮れのセクターでの孤立波の優勢な発生はまだ謎であり、さらなる調査が待たれている。

シミュレーションの結果では、これらの構造の空間範囲は30~330メートルと非常に小さいことが分かった。一方、これらの波は、地球の磁気圏におけるプラズマの励起とその輸送の原因であることが知られており、同研究チームは、火星の磁気圏の粒子動力学における孤立波の役割と、そのような波が火星の大気イオンの損失に何らかの役割を果たすか否かを更に調査している。

(※1) 無人探査機「MAVEN(メイブン)」
https://pds-ppi.igpp.ucla.edu
https://www.nasa.gov/mission_pages/maven/main/index.html

(※2) ラングミュアプローブ(Langmuir Probe): プラズマの電子密度、電子温度、電位を測定するためのプローブ。

上の図は、青い星に孤立波が発生した場合の火星の周りのMAVEN宇宙船の軌道を示す。
下の図は、2015年2月9日に火星の大気中に見られた一連の孤立波の構造を示している
(PIBリリースより)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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