2023年03月
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高効率スピントロニクスを利用、ニューロモルフィック・ハードウェア開発 インド

インド工科大学(IIT)デリー校はIITボンベイ校と共同で、磁性材料を使用して新しいニューロモルフィック(神経模倣)ハードウェアを開発した。3月2日付け発表。これは、電源がオフの状態でもデータを保存が可能であり、神経系のシナプスに似た機能を果たすものだ。インドでの磁性材料を使用したニューロモルフィック・デバイスとしては初めて。

このデバイスは、IITデリー校の最先端施設を使用して製造されたコバルトの極薄層で構成されており、使用される層の厚さはナノメートルの範囲で、人間の髪の毛の80,000~100,000分の1である。その制作・製造には非常に高い精度が要求され、空気分子をほとんど含まない超高真空チャンバー内で実行されている。

最近のAlexa(Amazon)や Siri(Apple)などでは、インタラクティブ(対話型)な音声アシスタントにより、質問への回答(応答)を得たり、オンラインでタスクを実行したりすることが非常に簡単になっているが、そのバックグラウンドで実行されている手順は非常に複雑で高度なものである。例えば、入力された音声データをインターネット経由でクラウドに配信し、クラウドでデータを処理してからデバイスに応答を送信することなどの処理がそれである。

しかし、そのような処理においては、インターネットの速度が遅い場合や、停電などの要因により音声データが失われることを完全には排除できない。そこで、このような問題・障害は内蔵メモリを備えたローカルハードウェアがすべての操作を実行するニューロモーフィック・コンピューティングの出現によって解決される可能性がでてきたのだ。さらに、データの損失を防ぎながら同時に消費電力の削減も期待されている。

今回の研究は、インド教育省が資金を提供する「変革的かつ先端科学研究のためのスキーム」事業(Scheme for Transformational and Advanced Research in Sciences: STARS) (※) によりサポートされている。この調査結果は、ACS Applied Electronic Materials に掲載された(以下リンクを参照)。

左はデバイス概略図。右は実際のデバイスの横に立つIITデリー校のPranaba Kishor Muduli 教授と博士課程のRam Singh Yadav氏
(IITデリー校ウエブサイトより)

(※) STARS: 社会に関連/貢献する研究を支援する目的で、物理学、化学、生物科学、ナノ科学、データ科学、数学、地球科学の6の基本的な推力ドメインが特定されており、インド理科大学院 (IISc) によって運営(実施、監視、管理)されている。
https://www.indiascienceandtechnology.gov.in/programme-schemes/societal-development/stars-scheme-transformational-and-advanced-research-sciences

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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