2023年03月
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インド高等教育に関する全国調査報告書(AISHE 2020-21)を発表

インド教育省は、「2020年度・全インド高等教育調査報告書」(All India Survey on Higher Education 2020-21: AISHE 2020-21)を発表した。2023年1月29日付け。

教育省は2011年以来、インド全国にある全ての高等教育機関(大学、カレッジ等)を対象として、全インド高等教育調査 (AISHE) を実施し、国内高等教育の実態を調査・報告してきた。この調査では、学生の在籍状況、教師のデータ、教育インフラの情報、財務情報など、さまざまなパラメーターに関する詳細な情報が収集されている。

AISHE 2020-21(2020年度版)では、全国の高等教育機関は、教育省が国立情報学センター(National Informatics Center: NIC) と共同で開発した完全なオンラインデータ収集プラットフォームである「Webデータキャプチャ・フォーマット」(DCF)を初めて利用してデータ入力を行った。

2020年度の全国調査報告書(AISHE 2020-21)のハイライトは次の通り。

<在籍学生数>

  • 高等教育の在籍者数は初めて4千万人を超えて4.14千万人に増加し、2019年度比で7.5%、2014年度比では21%の大幅な増加となった。また、女子学生数は2千万人に達し、2019 年から2020 年にかけて130万人の増加となった。
  • SC(Scheduled Caste:指定カースト) (※1)登録者数の在籍者数に関しては、SC学生の在籍数は、2014年度の4,606千人、2019年度の5,657千人と比較して、2020年度には5,895千人と28%増え、女子SC学生の数は38%と大幅な増加となった。
  • ST(Scheduled Tribe:指定部族) (※2)登録者に関しては、ST学生数は2014年度には1,641千人だったが、2019年度には2,160千人、また2020年度には2,410千人へと47%増加した。特に女子ST学生数は63.4%と激増した。ST学生の年間平均入学者数は、2007年度から2014年度の期間の約75千人から、2014年度から2020年度の期間では約10万人に増加した。
  • OBC(Other Backward Class:その他後進諸階級) (※3)に関しては、OBC学生数は2019年度の14.2百万人から60万人増えて2020年度には14.8百万人に増加。女性OBC学生数は39%増と、こちらも大幅に増加した。2014年度以降のOBC学生数の増加は約360万人(32%)であり、著しい増加を見せている。
  • インド北東部 (※4)の地域に関しては、総学生数は、2014年度の936千人と比べて2020年度には1,206千人へと29%増加し、特に女子学生数は34%増と大幅に増加した。2020年度の北東州での女子学生の在籍者数は614千人で、男子の592千人を上回っている [男子学生100人に対して女子学生が104人いることになる]。この地域では、2018年度に初めて女子学生数が男子学生数を上回り、その後もこの傾向は続いている。
  • 2011年の18~23歳グループの人口予測をベースにすると、総就学率(Gross Enrolment Ratio: GER)は、2019年度の25.6から27.3に増加した。また、GERは全ての社会集団で前年より改善し、特に、ST学生のGERは1.9ポイントの顕著な増加が見られた。2017年度以降、女性のGERが男性のGER を上回っており、女性と男性のGER比率である男女平等指数 (Gender Parity Index: GPI)は、2017年度の1 から2020年度の1.05 に増加した。
  • 通信教育への登録者数は、4,571千人 (うち女性は2,090千人) で、2019年度から約7%、2014年度からは20%も増加している。
  • 2019年に比べて、教職員の総数は47,914人増加した。
  • 在籍学生数における上位6州は、ウッタルプラデーシュ州、マハラシュトラ州、タミルナードゥ州、マディヤプラデーシュ州、カルナタカ州、ラジャスタン州。
  • AISHE 2020-21への回答では、全学生の約79.06%が学部レベルのコースに登録されており、11.5%が大学院(修士、博士)レベルとなっている。
  • 学部レベルの専攻分野別の入学者数は、人文系が33.5%で最も高く、次に自然科学系(15.5%)、商学系(13.9%)、技術工学系(11.9%) の順となっている。
  • 大学院レベルでは、最大数の学生は社会科学 (20.56%) コースに在籍しており、続いて自然科学 (14.83%) が続いている。
  • 大学の全在籍者(登録者)のうち、5,550千人が 自然科学系(Science Stream)に登録されており、その中では、女子学生数の2,950千人が男子学生数の2,600千人を上回っている。
  • 大学 (University)の数では、全体の59%が国立(Government)で、在籍者数の73.1%を構成している。またカレッジ(College)の数はで、全体の21.4%が国立で、在籍者数の34.5%となっている。
  • 国家重要機関(Institute of National Importance:INI)の数は、2014年度から2020年度までの期間中に61%近く増加した。
  • 防衛、サンスクリット語、バイオテクノロジー、法医学、デザイン、スポーツなどに関連する専門大学でも、2014年度と比較して2020年度には在籍者数が増加している。

<高等教育機関数>

  • 高等教育機関からの卒業者総数は、2019年度の 9.40百万人に対して、2020年度では 9.54百万人に増加した。
  • 2020年度における高等教育機関における様々な教育インフラ施設のアクセス・利用可能性に関しては、図書館 (97%)、研究所 (88%)、コンピュータセンター (91%:2019年度には86%)、スキル開発センター (61%:2019年度は58%)、国家知識ネットワーク(National Knowledge Network)(※5)への接続 (56%:2019年度は34%)
  • 2019年度比で、大学(University)数は70校増加し、カレッジ(College)数は1,453校増加した。その結果、大学/大学相当高等教育機関の総数は1,113校、カレッジは43,796校、独立系高等教育機関は 11,296校となっている。2014年度以降では、大学(University)数は353校(46.4%)増加し、INIは2014年度の75校から2020年度の149校へとほぼ倍増した。インド北東部の州では、2014 年から2015年にかけて191校の新しい高等教育機関が設立された。
  • 大学の数が最も多い州は、ラジャスタン州 (92校)、ウッタルプラデーシュ州 (84校)、グジャラート州(83校)。
  • 大学の増加数は、2007年度から2014年度の間では平均約50校だったが、2014年度から2020年度の間では平均して毎年59校の増えたことになる。
  • 女性専用の高等教育機関としては、大学は17校(内、14校は州立校)で、カレッジは4,375校がある。
  • カレッジの密度、つまり適格人口 (18~23歳の年齢グループの人口) 10万人あたりのカレッジ数は2020年度では31校だが、2014年度では27校だった。
  • カレッジ密度が最も高い州は、カルナタカ州 (62校)、テランガナ州 (53校)、ケララ州(50校)、ヒマチャルプラデシュ州(50校)、アンドラプラデシュ(49校)、ウッタラカンド州(40校)、ラジャスタン州(40校)、タミルナドゥ州(40校)の順となっている。
  • カレッジ数が最も多い上位8地区(District)は、バンガロール都市圏(1,058校)、ジャイプール(671校)、ハイデラバード(488校)、プネ (466校)、プラヤグラジ(374校)、ランガレッディ(345校)、ボパール (327校)、ナグプール(318校)となっている。
  • カレッジ数では、上位8州は、ウッタルプラデシュ州、マハラシュトラ州、カルナタカ州、ラジャスタン州、タミルナドゥ州、マディヤプラデシュ州、アンドラプラデシュ州、グジャラート州。
  • 43%の大学と61.4%のカレッジが農村地域にある。

<教員数>

  • 高等教育機関の教員総数は1,551,070人で、そのうち、約57.1%が男性で、42.9%が女性となっている。男性教員100人あたりの女性教員数は、2014年度の63人、2019年度74人から 2020年度には75人に改善された。

注:

  • (※1) 指定カースト(SC):カースト制度(ヴァルナ・ジャーティ制)の外側にあって、インドのヒンドゥー教社会における被差別民でダリットとも呼ばれる。
  • (※2) 指定部族(ST):ヒンドゥー教やイスラーム教などの大宗教に属さず、固有の文化を保ち続けているコミュニティの名称。
  • (※3) その他後進諸階級(OBC):社会的、教育的に特に後進的とみなされる社会階級の名称。
  • (※4) インド北東部(州):アルナチャルプラデシュ州、アッサム州、メガラヤ州、マニプル州、ミゾラム州、ナガランド州、トリプラ州の総称。
  • (※5) 国家知識ネットワーク(National Knowledge Network):最先端の研究とイノベーションを可能とするための高度なコミュニケーション・計算能力を備えたマルチギガビット機能デジタルネットワークであり、全国の大学、研究機関、図書館、研究所、医療機関、農業機関等を接続するもの。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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