インド理科大学院(IISc)は3月2日、同学の有機化学部(OC)とマテリアル・リサーチセンター(MRC)の研究者が、疾患細胞への薬物送達において、二次元二硫化モリブデン(2D-MoS2)のナノシートの有効性を示したと発表した。研究成果は学術誌 ACS Nano に掲載された。
ナノ材料は通常、用途に応じた化学修飾などの改良が必要となる。一般的には、ナノ材料の表面に配位子を結合させ、機能化と呼ばれるプロセスを行う。
今回、研究チームは、2D-MoS2のナノシートにチオール配位子を結合させることで、チオール配位子が生体内にあるチオールと交換され、薬物が体内に放出されることを明らかにした。ナノシートの生体内での安全性についても確認された。
これまで、ナノテクノロジーの生物医学用途では、金ナノ粒子の利用が着目されてきた。その上、金ナノ粒子は高価であり、モノチオールとジスルフィド間の非特異的反応により、性能も制限がある。
「2D-MoS2のナノシートは、金ナノ粒子の代替品として有効であり、ナノテクノロジーの医学的応用において、非常に有益な材料になります」とIIScのポストク研究員で研究論文の筆頭著者であるプラディプタ・ベヘラ(Pradipta Behera)氏は話す。
研究チームは、2D-MoS2のナノシートが生体内で安定することを確認しており、ナノシートは、ナノ粒子よりも表面積が大きいため、薬物送達における効率が高いと考えている。チームは今後、さまざまなチオール溶液下でのナノシートの安定性の改善を行い、他の用途に利用可能な機能化プロセスを検討することを計画している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部