インド理科大学院(IISc)は2月23日、雷がどのように起こるかをシミュレーションするための新たな計算モデルを開発したと発表した。このシミュレーション研究から集められる知見は、航空機の雷害対策に役立つと期待される。研究成果は学術誌 Atmosphere に掲載された。
航空機を雷から保護するための最初のステップは、航空機のどの部分に雷が落ちやすいのかを特定することである。IISc電気工学科のウダヤ・クマール(Udaya Kumar)教授の研究チームは、これまでの研究は単純化され過ぎていると考え、包括的な計算モデルの開発を行った。クマール教授の研究室では、雷害対策に関する研究を過去数年間にわたって行い、雷の影響をモデル化することに注力してきた。
通常、雲から地面に向かって落ちる雷は、雲の中でリーダーと呼ばれる雷前駆現象が起こり、その後、地面に向かって雷が伝播する。しかしながら、大気の観測データと今回開発されたモデルによれば、9割以上のリーダーの放電は航空機で起こっていた。モデルでは、異なる機体形状を持つDC10旅客機とSDM戦闘機を条件に取り入れ、航空機周辺の大気電界と放電の計算を適切に行えるようにした。
研究チームは、開発したモデルを使って、リーダーの放電に必要な航空機周囲の大気電界を推定した。これらの計算結果は、航空機を使って雷雨の中を観測した米航空宇宙局(NASA)のストームハザードプロジェクトなどの観測データとも一致した。
研究チームは現在、航空機で見られる雷電流のピーク値や、雷が発生した際、航空機周辺における大気変化の要因などを調査する計画を立てている。こうした調査は信頼性の高い雷モデルや雷害対策の設計を可能にするとみられている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部