2023年04月
トップ  > インド科学技術ニュース> 2023年04月

新規バイメタル接合プロセスを開発―高い熱・電気伝導性を持つ銅と鋼の複合材実現 インド

インド科学技術庁(DST)は、同庁傘下の粉末冶金新材料国際先端研究センター(International Advanced Research Centre for Powder Metallurgy and New Materials: ARCI)が、銅と鋼のバイメタル複合材を作成するための新たなバイメタル接合プロセスを開発した。2023年3月24日付け発表。

銅と鋼は、融点、熱伝導率や熱膨張特性が異なるため、銅とステンレス鋼のバイメタル構造を欠陥なく接合することは非常に困難であった。そこで、この課題に対処するために、レーザー粉末層融合 (Laser Powder Bed Fusion: L-PBF) と呼ばれる技術や金属3Dプリンティングの選択的レーザー溶融 (SLM) 技術を使用して、新しいバイメタル接合プロセスを開発したというもの。この技術は、金属粉末の溶融による層の堆積を伴い、ステンレス鋼粉末の小さな溶融プールが作成され、その後の冷却速度が加速され、銅表面でのステンレス鋼溶融物の混合が制限されるとしている。

L-PBFプロセス中の金属とのレーザービームの相互作用は、銅と鋼の両方の混合の程度に影響を与える。そこで、界面微細構造の形成と結合メカニズムを実証し、より強力な界面結合を達成するために、引張挙動の研究を実施した結果、界面での銅と鋼のバイメタル結合が強いことを確信するに至ったという。

高倍率のイメージング施設を介して得られた顕微鏡写真は、界面の銅と鋼が多く含まれる広い領域で限られた混合を示していた。鋼から銅側へのFe(鉄)、Cr(クローム)、Ni(ニッケル)元素の拡散により、界面付近で銅が固溶強化 (※1)され、銅合金側の界面から硬度が勾配的に低下していることが分かる。

技術の進歩に伴って、より高性能で多機能な構造とコンポーネントが求められており、バイメタル構造の開発が大きな注目を集めている。このような構造は、個々の材料特性の独自の組み合わせを提供するため、さまざまな用途に合わせて高度にカスタマイズが可能となることから、この分野の研究は、コンポーネントの熱伝導率と強度が重要な役割を果たすさまざまなエンジニアリングへの応用で重要な意味を持つと期待されている。この複合材は、熱交換器、油圧ポンプ部品、冷却ステーブ (※2)、ガイドプレート、熱間工具などの様々な産業用の用途に対応する高い熱伝導性と電気伝導性を備えている。

また、銅と鋼で作られたこの種のバイメタル複合材には、高い熱伝導率と電気伝導率、に加えて並外れた耐食性や機械的特性も備えており、L-PBF技術を使用したステンレス鋼と銅合金のバイメタル接合プロセスで、その特性が強化され、カスタマイズが可能な強力バイメタル構造を提供することで、エンジニアリング業界に革命を起こす可能性を秘めている。

(※1) 固溶強化(Solid Solution Strengthening):結晶中に固溶した異種元素と転位との相互作用によって転位の運動が抑制され,材料が強化される現象。

(※2) 冷却ステーブ(Cooling Stave):冷却ステーブとは、炉内特性の維持及び高炉炉内の高温ガスや溶融物から鉄皮を保護するための設備。

図1: (a & c) 銅合金板上のステンレス鋼粉末の薄層のレーザー溶融による強力な銅-鋼バイメタル界面の形成、および (c) 鋼と銅の混合を示す界面特性を示す概略図

図2: (右)FeとCuの元素マップと、その界面で連動した銅と鋼の特徴を示す顕微鏡写真。(左)強力な界面結合をサポートする引張挙動を示すグラフ
(いずれの図もPBIリリースより)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る