2023年04月
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ニューロモルフィックカメラと機械学習で50ナノメートル未満の対象物特定を可能に インド

インド理科大学院(IISc)は2月21日、IIScの研究者が、神経細胞を模した電子回路を持ったニューロモルフィック(神経模倣)カメラ、機械学習アルゴリズム、光学顕微鏡を組み合わせて、通常の顕微鏡では観察することのできない細胞内器官やナノ粒子などを検出する方法を開発したと発表した。この技術は、サイズが50ナノメートル未満の対象物の特定を可能にする。研究成果は学術誌 Nature Nanotechnology に掲載された。

光学顕微鏡の発明以来、科学者たちは、回折限界と呼ばれる技術的な壁を超えるための努力を行ってきた。対象物のサイズが200~300ナノメートルより小さくなると、顕微鏡は対象物を識別することが難しくなる。この回折限界を超えるために、科学者たちは、画像の加工や対象物への照明法を検討することに力を注いできた。

ニューロモルフィックカメラは、ヒトの網膜が光を電気インパルスに変換する方法を模した機能を持っている。今回発表された研究は、ニューロモルフィックカメラを用いて、強度の異なるレザーパルスを照射することで、非常に小さな蛍光粒子をピンポイントで特定し、その蛍光レベルを測定する。ニューロモルフィックカメラは、蛍光強度が大きくなると、そのシグナルを「オン」イベントとして記録し、蛍光強度が小さくなると、そのシグナルを「オフ」イベントとして記録する。得られたデータは、照射したエリアを再構築するために使用される。

発表論文の筆頭著者であるロヒト・マンガルヴェデーカル(Rohit Mangalwedhekar)氏は、「今回の研究では、対象物となる蛍光粒子の正確な位置を知るために、二つの方法を採用した」とし、1つは、蛍光粒子の実験結果を忠実に表す150万の画像データを学習したディープラーニングアルゴリズムを使って、対象物の重心がどこにあるのか予測する方法で、もう1つは、ウェーブレットセグメンテーションアルゴリズムを使って、対象物の重心を「オン」と「オフ」イベントのそれぞれで決定する方法を採用した。同氏は「この2つの予測結果を組み合わせて、これまで以上に対象物の正確な位置にレンズの焦点を合わせることができる」と説明した。

研究チームは、この技術を駆使して、水溶液の中にある蛍光粒子の動きを追跡することに成功した。今回の方法は、生物学や化学、物理学における確率過程の理解に応用できる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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